2005 Fiscal Year Annual Research Report
行政の規制権限不作為と司法統制に関する日仏比較法研究
Project/Area Number |
17530030
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
北村 和生 立命館大学, 大学院・法務研究科, 教授 (00268129)
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Keywords | 公法学 / 国家賠償法 / フランス法 / 行政法 |
Research Abstract |
本年度の研究内容は以下の通りである。 (1)不作為に関する訴訟を中心としたわが国の行政訴訟、国家賠償法の研究 まず、わが国の行政の権限不作為と司法統制についてであるが、既に平成16年に行政事件訴訟法が改正されたが、それだけではなく、平成16年から平成17年にかけて、行政の権限不作為に対する国家賠償請求訴訟に関して重要な判決が、最高裁を含めていくつか下されている。これらの判例からは、国家賠償請求訴訟と行政事件の訴訟の関連性も指摘することができる。まず、反射的利益論について行政事件訴訟(特に抗告訴訟)と国家賠償請求訴訟で共通点が見られることである。さらに、従来は抗告訴訟における反射的利益論は訴訟要件の問題で国家賠償請求訴訟では実体の問題として両者を峻別することが通常の考え方であったが、近時の国家賠償請求の判例における違法性判断基準は行政事件訴訟の本案の判断にも一定の影響を与えるのではないかと考えられる。そうすると、行政の権限不作為に対する司法救済として、国家賠償請求訴訟と行政事件訴訟を共通して体系化できることになる。本研究では、既に近時の最高裁判例の分析から、このような点を明らかにしてきたが、今後は下級審を含むより多数の判例に基づいて両者の共通点を明らかにしていくこととしたい。 (2)フランス法を中心とした比較法研究 もっとも、いかなる行政活動が義務付けられるかという実体の判断については、現在のわが国の裁判例、特に行政事件訴訟においては、未だ蓄積に乏しく、このような点についてはフランス法の知見が重要となる。本年は、このような点から、フランスにおける環境章典の導入、特に予防原則が含められ憲法上の効力を有するようになったことが持つ意義が研究対象となった。これについては、従来よりも、行政に作為を義務付ける範囲が拡大されることになったと考えられる。ただし、現時点では学説上の指摘であり、行政判例自体はまだそれほど現れておらず、具体的な点については、次年度以降の課題として継続したい。
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