2006 Fiscal Year Annual Research Report
行政の規制権限不作為と司法統制に関する日仏比較法研究
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17530030
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
北村 和生 立命館大学, 大学院法務研究科, 教授 (00268129)
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Keywords | 行政法 / 国家賠償法 / フランス公法 / 行政訴訟 |
Research Abstract |
平成18年度は、研究実施計画に従い、まず、フランスの規制権限不作為に関する国家賠償請求訴訟として、わが国でも既に同様の訴訟が提起されている(わが国では未だ判決は見られない)アスベスト被害者による国家賠償請求訴訟のコンセイユデタ判決を中心に研究した。同判決は、アスベストのようなリスクに対する行政の義務として、適切な規制を行ってリスクを低減させる義務だけではなく、情報収集や情報提供の義務の存在を認めた。しかも、アスベストに対する規制が行われた後においても、後者の情報集義務違反を根拠として国家賠償責任を認めた。同判決の、判例としての射程に関してはフランスにおいても必ずしも見解が整理されているわけではなく、今後の事例、とりわけアスベスト以外の被害に関する事例の検討が重要になると考えられる。しかし、情報収集義務の違反を根拠として国家賠償責任を認容したという意味では、コンセイユデタが、リスクに対応する行政の義務を相当程度拡大したと考えることができるであろう。 また、以上のような行政の規制権限不行使に関しては、被害のレベルが高いものが多いことから、被害者救済制度の創設が重要となる。わが国でも2005年のアスベスト被害をきっかけとして、被害者救済制度が創設されたが、フランスでは同様の制度を数年前に創設している。フランスでの救済制度はFIVAと呼ばれる一種の基金によって行われているが、被害者ごとに必要な救済を行うというしくみをとっており、わが国とはかなり異なっている。 平成18年度の研究によって以上の点を明らかとした。国家賠償が主な研究対象となったが、行政訴訟制度に関しても、わが国でも第三者による規制権限行使を求める義務付け訴訟の事例が見られはじめたことから、それらに関する研究も継続した。
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