2007 Fiscal Year Annual Research Report
行政の規制権限不作為と司法統制に関する日仏比較法研究
Project/Area Number |
17530030
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
北村 和生 Ritsumeikan University, 法務研究科, 教授 (00268129)
|
Keywords | 公法学 / 行政法 / 行政訴訟 / フランス公法 / 国家補償法 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に引き続き、フランスの行政判例における、リスク管理に関する行政の権限不作為を扱った事例と、わが国の権限不作為に関する事例の判例理論の比較研究を行った。 わが国における行政の権限不作為に関する判例として、研究対対象とした判例は、フランス法との比較という観点から、アスベスト被害に関する国家賠償請求訴訟(フランスと異なり、判決は未だ下されていない)や、さらに、昨年度大きな動きが見られた、C型肝炎訴訟やトンネルじん肺訴訟などの新しい事例をも含んでいる。これらの判例の分析に基づいて、行政のリスク管理における権限不作為に関して、判例理論の研究を行い、さらに、フランス行政判例との比較を行った結果、以下のような共通の問題意識があることを明らかにした。すなわち、フランス行政判例においては、アスベスト訴訟に見られるように、予防原則により、リスクを管理する行政の義務の射程を、その調査義務を厳しく認めることによって拡大してきたのだが、わが国の権限不作為を理由とする国家賠償請求訴訟においても、全く同じではないものの(フランスでは予防原則はわが国と異なり憲法上の効果を有する)、行政の調査義務の内容が大きな役割を果たしているという点である。すなわち、リスク管理をするための行政の権限不作為に関しては、このよう調査義義務を、何を根拠として行政機関に課すのか、また、その具体的な内容はどの範囲なのかという点が重要と考えられるということである。 もちろん上記のような点は、国家賠償請求訴訟に関する判例の研究から得られた知見であり、行政訴訟に関しては、次年度の研究において扱うこととしたい。
|