2005 Fiscal Year Annual Research Report
冷戦後における国連平和維持機能の規範的展開とその実効性
Project/Area Number |
17530037
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
酒井 啓亘 京都大学, 大学院・法学研究科, 教授 (80252807)
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Keywords | PKO / 国連 / 平和維持 / 多国籍軍 / 地域的機関 / 活動原則 / 国際法 / 国連憲章第7章 |
Research Abstract |
本年度は主として国連平和維持活動(PKO)の考察を中心に研究を進めた。具体的には、PKOの活動原則の中でこれまで検討していなかったもの、すなわちPKOの自衛原則に関する検討を行うとともに、日本のPKO政策の法的検討を行った。 前者については、伝統的PKOにおける自衛原則の位置づけ、90年代前半に出現した国連憲章第7章とPKOの結合現象における自衛原則の成立基盤の動揺、そして90年代末から現在に至るまでに見られる「強化された(Robust)」PKOにおける自衛原則の機能を順次検討した。その結果、自衛原則が適用される範囲の拡大がPKOに付与される任務の拡大と符合し、それを実効的に遂行するための段階性を自衛の範囲の拡大と憲章第7章に基づく行動の援用の親和性が表していること、しかしながらその現実の実施にはなおpeacekeepingとpeace enforcementとの区別の不明確さによる混乱が生じていることが指摘された。この研究は「国連平和維持活動と自衛原則」として近々公表される。 また後者に関しては、「国連平和維持活動(PKO)の新たな展開と日本-ポスト冷戦期の議論を中心に-」というタイトルのもとで2005年度国際法学会秋季大会での学会報告を行う際に包括的な検討を行った。ここでは、PKOをめぐる国内法制度の概要を説明し、それに基づいて行われた90年代以降の日本の実行を概観した後、その実行の法的評価と問題点を摘出し、その処方箋を提示しつつ、現在国連の実行で展開を続けている「強化された」PKOとの関連で日本のPKO政策がとりうる、もしくはとるべき方向性を示した。特に、PKO部隊の自衛の根拠、PKO部隊の行為の帰属関係、武力行使とその主体という問題に関わる日本政府の憲法解釈が国際法の観点から妥当性を持つものではないことを指摘し、PKOへの積極的参加を行う際にはそうした解釈の変更を必要とすることを提起した。なお、この学会報告は国際法学会の学会誌である『国際法外交雑誌』に掲載されることが決定された。
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Research Products
(1 results)