2005 Fiscal Year Annual Research Report
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17530055
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
伊東 研祐 慶應義塾大学, 大学院・法務研究科(法科大学院), 教授 (00107492)
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Keywords | 組織体刑事責任論 / 企業文化論 / 企業統治機構改革 / 両罰規定 |
Research Abstract |
本年度は、2年計画の初年度にあたり、以下の4段階での研究を実施した。 1)第1段階は、近時における両罰規定解釈論並びに組織体刑事責任論の展開を、判例等も追いつつ、確認的に纏め、批判的に総括することを目的とし、従前の研究資料等をも利用して、総括としては尚補完する必要があるものの、後掲のようなペーパーに纏めた。組織体刑事責任論の展開には、「企業文化論」の多大な影響が見られるが、それが遵法的文化形成・維持機能を職務とする個人責任追及に向かう可能性及び妥当性の検討の必要性が認識された。法務省の組織体処罰法制改正の方向性や提案等については、なお情報収集の継続が必要である。 2)第2段階は、米国、ドイツ、コモンウェルス諸国等の組織体刑事責任論の状況を分析し、我が国の理論状況の前提的視座や法的擬制との相違とその認識の程度等に基づく成果の利用可能性を、改めて批判的に検討することを目的とした。米国・コモンウェルス諸国での「企業文化論」の浸透と、それに因る組織体に関する連邦量刑基準や訴追基準の改革が、我が国での理論状況との適合性を増している反面、米国でのサーベンス・オクスレイ法等による個人責任追及の激化とその反動が、我が国の今次の会社法改正と併せて、如何なる影響を与えるか、慎重な分析を要することが確認された。 3)第3段階は、当初から年度を超えた実施が予定されたもので、我が国における企業統治機構改革とその前提する企業経営改革が、法制度上で如何なる意義を持ち、それが組織体刑事責任論の視座に如何なる影響を与え得るか、特に、意思決定主体及び同プロセスに注目する理論傾向との関係での影響を分析・検討することを目的とした。新会社法の分析は、対象が膨大であることもあり、なお途上であるが、ライブドア事件等により、証券取引法等を含めて、急速に外部監査システムの刑罰的担保、個人重罰による違反行為威嚇等々を求める声が形成されている反面、企業自体への刑事責任の帰属の根拠・基礎というものが忘れ去られているような印象があり、組織体刑事責任論の進展の為には、議論枠組の再構築・確認が必要であることが痛感された。この点については、整理の為のペーパーを纏める必要があると思われる。 4)第4段階は、次年度に行う第5段階の準備であり、アメリカ合衆国やコモンウェルス諸国における企業統治機構改革及び企業経営改革に対する組織体刑事責任論の対応の詳細について、基本的文献の収集・学習を開始した。
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Research Products
(1 results)