2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17530063
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
今井 克典 名古屋大学, 大学院法学研究科, 助教授 (30283055)
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Keywords | 会社債権者 |
Research Abstract |
第1に、会社法においては、会社債権者が会社情報を得る方法として、会社の登記や会社の公告(商業登記法10条1項等、会社法440条1項・2項)を利用する方法のほかに、定款、各種議事録、各種名簿、計算書類等の閲覧請求権等(会社法31条2項・318条4項等・125条2項等・442条3項)が用意されている。しかし、このような閲覧請求権等によって、会社債権者が必要な情報を充分には得られるとは限らないように考えられる。 第2に、会社債権者のこのような閲覧請求権等が争われた裁判例は、裁判例掲載誌を調べた限りでは、1981年改正前商法282条2項の計算書類等の閲覧請求権にかかるものが見受けられるが(なお、その争いは1981年商法改正により処理されている)、そのほかには見当たらない。これに対して、株主の閲覧請求権等については、多くの裁判例がある。そのため、会社債権者の閲覧請求権等にかかる裁判例が見当たらないのは、会社債権者が、会社法が用意する閲覧請求権等を利用していないからではないかとも考えられる。 第3に、会社債権者は、担保の取得のほかに、取引関係成立の際の特約(いわゆる誓約条項)によって、自己の債権の保全を図ろうとしている。すなわち、会社債権者は、会社法が用意する方法とは別に、特約によって用意された方法によって会社情報を得ることが多いと考えられる。さらには、会社法においては、剰余金の配当のような原則として株主総会に決定権限がある事項について、会社債権者は、会社との特約によって、会社に対して(会社経営者に対して)一定の制約をかけることもある。
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