2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17530063
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
今井 克典 Nagoya University, 大学院・法学研究科, 教授 (30283055)
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Keywords | 募集株式の発行等 / コベナンツ |
Research Abstract |
第1に、違法な新株の発行・自己株式の処分(以下「募集株式の発行等」という)を採り上げて、取引の安全、既存株主の保護、および会社債権者の保護の関係について考察した。判例は、違法な募集株式の発行等につき、取引の安全を理由にして原則として有効であるとするが、そのため、取引の安全が必要ではない場合にまで、有効とされている。そこで、募集株式の発行等の有因性の程度を緩和して、募集株式の発行等が有効であっても、募集株式の引受契約が無効である場合があり、その場合には、会社は株式の返還を請求することができると解される。これにより、既存株主の保護を一定程度図ることがができる。また、会社は、金銭等を返還しなければならないが、会社が株式の返還を受けるのは、自己株式の取得であるから、財源規制がかかり、会社債権者の保護も図られる。このような考察の結果、従来、違法な募集株式の発行の処理について、会社債権者の保護を維持しつつ、株主の保護が図られる(11研究発表「違法な募集株式の発行等の事後処理」参照)。 第2に、確約条項(コベナンツ)の効力について考察した。会社債権者は、確約条項によって、会社経営に一定の制限を加えることができ、場合によっては、株主ないし会社の利益を害することもありうる。そのため、確約条項が有効である場合には一定の限界があると考えられる。確約条項が、株主総会の決定権限を制限する場合には、確約条項は、定款の定めがなければ有効ではないと解される。しかし、定款の定めが有効である項目・内容は、必ずしも明確ではなく、また、確約条項のうち財務制限条項には、株主総会の決定権限を制限するか否かが必ずしも明確ではないものがある。このような考察の結果、会社債権者による確約条項を通じた会社経営への介入の限界がある程度明らかにされる(11研究発表「融資契約における確約条項の会社法上の効力」参照)。
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