2006 Fiscal Year Annual Research Report
福祉契約に基づく契約責任と福祉サービス利用者に対する契約法上の救済
Project/Area Number |
17530072
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
笠井 修 中央大学, 法務研究科, 教授 (00185737)
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Keywords | 福祉契約 / サービスの質 / 契約法 / 社会福祉法 / 自己決定 / なす債務 |
Research Abstract |
18年度においては、比較法研究を進めるとともに、17年度の成果と総合して2年間の研究の総まとめを行った。 1.比較法研究 比較法研究としては、予定していたドイツにおける実情の聞き取り調査を行った。マールブルク大学、フランクフルト大学において、「ホーム法」改正(1990年)や、近時の立法である「介護の質の保証法」(2001年)に関する情報の収集に努めた。特に、第三者機関による介護の質の評価を義務付けた改革につき、日本法の仕組み(この点については、「福祉契約におけるサービスの『質』の評価」筑波法政35号(2003年)35-60頁を発表済み)を念頭に置きつつ、現状の把握を試みた。さらに、デュイスブルクのフィンガー法律事務所を訪問し、弁護士デーテ・フィンガー氏から、特に「質の保証法」に関する情報提供を受けた。同法が直面する問題点について、新しい知見をえることができた。 2.要件事実論における展開 福祉契約に基づくサービスの提供過程において契約責任のあり方が問題となる場合には、本研究代表者がかつて整理した諸論点の他、今日では、要件事実論上の論点についても解明が必要となっている。福祉サービスの提供契約と要件事実論を関連つけた研究は、これまでまったく試みられてこなかったため、今年度、その一側面を分析し論文にまとめた(「役務提供型契約における要件事実」伊藤滋夫編『要件事実の現在を考える』〔2006年、商事法務〕62-79頁)。これは、福祉サービスの提供債務の不完全履行を追及する場合における、規範的要件としての履行不完全性を基礎付ける評価根拠事実を解明しようとしたものである。 3.今後の課題 2年間の研究により、福祉契約をめぐる契約法上の問題点を検討し、ドイツ法との比較法研究をも含めて、その解決の方向を見出す成果をえた。さらに、当初の課題設定においてはその重要性を十分に訴えることができなかった要件事実論との関連における問題性についても、新しい展開を見出すことができた。この点については、検討も緒についたばかりであるので、これから本格的な分析に取り組んで行くこととしたい。
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Research Products
(3 results)