2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17530138
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
神取 道宏 The University of Tokyo, 大学院・経済学研究科, 教授 (10242132)
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Keywords | ゲーム理論 / くり返しゲーム / 私的観測 / マッチング / 安定性 |
Research Abstract |
長期的関係を結ぶと利己的な個人もうまく協力しあうことが出来ることを示す数理モデルであるくり返しゲームについて、引き続き研究を行った。各人がお互いの行動に関してばらばらなシグナルを見る「私的観測」のケースについては、各人の行動をうまく調整するのが難しく、高い程度の協調を達成する方法はあまりよく分かっていない。本年度の研究においては、私的観測下で協調的な均衡を構成する一般性のある方法を、weakly belief-free equilibriumという概念を使って定式化し、ディスカッションペーパーとしてまとめた研究報告を、University of Hong Kongにおいて開催された国際学会であるSummer Microeconomic Seminarsにおいて、招待公演として行った。 また、くり返しゲームの解説論文を、経済学でもっとも包括的で権威有る百科全書であるThe New Palgrave Dictionary of Economics, 2<nd> editionに執筆してきたが、このプロジェクトの仕上げの段階に入った。同論文は来年度中に出版の見込みである。 さらに、オフィスや駐車場などの分割性をもたない財の配分が、確率的な変動をともなう試行錯誤の交換過程のなかでどのように変化してゆくかを調べたR.Serrano, 0. Volijとの共同研究の最終的なまとめを行い、来年度中に出版予定の段階に到った。 最後に、新規のプロジェクトとして、小島武仁(Harvard)、安田洋祐(政策研究大学院大学)と、安定なマッチングの集合と戦略的補完性をもつ非協力ゲームの均衡の関係の研究に着手した。安定なマッチングは協力ゲームの解概念で、数学的に見ると束(lattice)の構造を持つが、一方で戦略的補完性をもつ非協力ゲームの均衡も束の構造を持つことが知られている。この両者の関係を結びつけ、新たな知見を得るべく研究を行った。
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