2007 Fiscal Year Annual Research Report
「政策の失敗」-政策の外部性とその産業間・地域間波及効果のミクロ経済理論的分析
Project/Area Number |
17530139
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 弾 The University of Tokyo, 社会科学研究所, 准教授 (30345110)
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Keywords | 理論経済 / 経済政策 |
Research Abstract |
いわゆる外部経済(不経済)とそれに起因する「市場の失敗」、更にはそれを内部化ないし是正すべき政策的介入に関する経済理論的分析の歴史は長く、高名なPigou税の理論にその端緒の一を見る。しかしながら、そのような政策の及ぼす外部性およびその結果いわば二次災害として起こり得るところの「政策の失敗」についての体系立った経済理論的分析は、意外とその蓄積が薄い。初(平成17)年度には先ず、租税理論、財政学、産業組織論、貿易理論などにおける既存文献を、特に政策的外部性という観点から読み直すことにより、これら既存諸論がどのような政策提言に応用可能か、という実用可能性についての用途開発を行うための準備段階を遂行した。斯かる用途開発か謂わば本計画の「往路」であるとするなら、次にその成果として導き出された政策用途を踏まえそこから遡及的にモデルを建設し直す作業が、本計画の「復路」を形成する。即ち、どのような政策用途(単なる政策効果ないし政策含意と区別すべき点に注意)の実現にはどのようなモデル設定から出発すべきか、という逆引辞典的な理論モデル体系が築かれる。斯くて第二(平成18)年度は主として初年度からの宿題、即ち先述のように、本課題初段階で導かれた政策用途から逆に出発して「往路」に対する「復路」を辿り、政策構造を論ずるというリヴァース・エンジニアリングを目するモデルの構築、に充当された。 斯くして謂わば帰納的に築かれた理論的基礎に立脚し、研究計画後半の二箇年度ではそれをより個別具体的な各論モデルへと演繹する作業を目する。このうち先ず平成19年度中に実行予定であった部分については、2回の豪州出張ならびに海外共同研究者との識見の交換により順調な実現を見た。更に、平成18年度からの翌債として懸案となっていたイスラエル及び英国の研究者との共同研究も、平成19年度内にその実現を得た。欧州の共同研究者との識見交換によっては而し、政策的介入の対象となり得るところの市場行動に関する一段深い理論的解析の必要性が判明し、同年度分研究費補助金の一部をその為の海外旅費用として平成20年度へ繰越(翌債)申請し現在に到った。 以上が平成19年度末に於ける進捗状況であったが、翌債された海外渡航は平成20年8月に無事完了を見ることができ、中間的な研究報告をドイツ・ベルリンのフンボルト大学でワーキングペーパーとしてまとめる運びとなった。
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