2008 Fiscal Year Annual Research Report
世界的規模で見た所得分布の不平等及び貧困度の変遷とアジアの位置に関する統計分析
Project/Area Number |
17530166
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
吉田 建夫 Okayama University, 大学院・社会文化科学研究科, 教授 (00150889)
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Keywords | 所得分布 / ローレンツ曲線 / 世界的所得分配 / 中間的不平等 / 相対的不平等 / 所得格差 / 所得分配 / 絶対的不平等 |
Research Abstract |
所得分布の不平等度を比較するとき、ジニ係数やタイルエントロピー係数をはじめ多くの不平等度尺度が用いられる。実証分析で用いられるこれらの不平等度尺度は、何れも、全構成員の所得の比例的変化によって不平等度は変化しないとするいわゆる「相対的性質」を持つ。しかしながら「相対的性質」はひとつの価値判断に過ぎず、これに代わる対極的な性質として「絶対的性質」を持つ不平等尺度や、両者の中間領域に属する「中間的不平等概念」を模索する試みが多く行われるようになった。筆者は近年、η不平等同値性と呼ぶ非線形の新しい中間的不平等概念を提唱し、この新概念に対応するローレンツ曲線を定義したうえで、社会的厚生関数とローレンツ曲線基準との同値性にかかわる諸定理を証明した(Yoshida, Social choice and welfare2005)。筆者の提唱したローレンツ曲線基準は、実証分析に耐えうる唯一の中間的不平等概念に基づくローレンツ曲線基準であることがその後の研究(Zheng, Social Choice and Welfare2007)によっても明らかにされており、実証分析への有用性にも期待を持つことができる。本研究では、昨年度に引き続き、この新しい不平等概念を応用して、世界的規模で所得不平等の推移に関する実証分析を行った。より具体的には、η不平等同値概念に対応してparameterizedした様々なジニ係数を用いて1970年以降2003年までの世界的所得分布の動向を詳細に計測した。その結果、(1)相対的不平等概念を体化した通常のジニ係数によれば世界的所得分布の不平等は計測期間を通じてほぼ一貫して低下傾向にあることが観察されるが、(2)中間的パラメータをごく僅かでも小さくとれば(具体的にはη値を0.8以下にとれば)たちまち全期間を通じて世界的不平等は上昇傾向に転じること、(3)とくに絶対的ジニ係数を用いた場合には世界的所得不平等の上昇は極めて大きなものがある、という結論を得ている。
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