2006 Fiscal Year Annual Research Report
流域コモンプールを再生する社会起業家のビジネス・モデル
Project/Area Number |
17530180
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
上田 良文 広島大学, 大学院社会科学研究科, 教授 (50106788)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西崎 一郎 広島大学, 大学院工学研究科, 教授 (80231504)
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Keywords | コモンズ / 社会起業家 / 流域社会 / 非営利ビジネス / 流域生態系 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に収集した全国データとアンケート調査に基づき、社会起業家の非営利エコ商品ビジネス・モデルを複数個設計し、それらに対する数理的定性分析を行った。とりわけ本年度は「ペットボトル水販売事業モデル」と「エコ・タウン建設モデル」の有効性を確認した。前者は上流域森林の自然植生を再生するための資金調達モデルであり、後者は、未だ事業化段階に到達していない様々な自然エネルギー技術を総合的,体系的に利用することによって自然エネルギーの事業化を推し進めることを目指す非営利ビジネス・モデルである。本年度の研究によって得られた主要な知見は以下のとおりである。 1.「ペットボトル水事業モデル」と「エコ・タウン建設モデル」の定性分析から次の結果を導出した。 (1)民間主導で流域コモンズを再生するには、非営利事業による資金調達が必要である。 (2)非営利ビジネスが有効であるためには、社会起業家の管理能力のみならず組織化能力が重要である。 (3)社会起業家のミッションが強いほど、流域コモンズの再生事業はヨリ良好な結果を得る。 (4)上記の3条件を満たす時、非営利ビジネス事業は徴税や寄付金による資金調達よりも有効である。 2.アンケート調査に基づく数値分析によれば、100万人の流域人口をもつ流域社会を対象にしてペットボトル水事業を行えば一年当たり1億円から9億円の純収入を期待できる。実際の収益額は流通コストの大きさに依存する。従って、流通コストを小さくできる配達システムの開発が不可欠である。 上記の研究成果の一部はヨーロッパ公共選択学会と日本公共選択学会で発表された。(報告論文は2編の論文としてまとめ投稿準備中である。) 最終年度の今年度は、全国的データを整理したうえで流域の農業再生モデルとして「エコ農業モデル」を設計し、それに基づいて定性分析、数値分析、シミュレーション分析を行いたい。
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