2007 Fiscal Year Annual Research Report
流域コモンプールを再生する社会起業家のビジネス・モデル
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17530180
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
上田 良文 Hiroshima University, 大学院・社会科学研究科, 教授 (50106788)
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Keywords | 社会起業家 / コモンズ / 非営利ビジネスモデル / 流域ネットワーク / 公共財私的供給 / エコロジー / 自然体験教育 / 農林業 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に設計した「ペットボトル水事業」と「エコ・タウン事業」のビジネス・モデルの有効性をふまえて、新たに「自然体験教育事業のビジネス・モデルの有効性を検討した。また、日本の流域社会のコモンズ保全に関する歴史モデルを構築し、本研究の歴史的な意義を明らかにした。さらに、従来の研究において明確な定義を与えられていなかった社会起業家の概念を合理的仮説に基づいて定義することで、従来の理論研究の補足を行った。本年度の研究によって得られた主要な知見は以下の通りである。 1.「自然体験教育事業」モデルの定性的分析と数値分析により次の結果をえた:流域住民と流域農林魚業が協力して非営利自然体験事業を推進することで流域の第一次産業を資金的にサポートでき、その付随的な結果として流域コモンズの保全が可能である。とりわけ、平成20年度から教育費助成が始まり非営利ビジネスとしてそのリーダーシップを発揮するべき社会起業家人材の育成が急務である。 2.社会起業家の理論研究によって、社会起業家が「長期的な利益を追求する起業家」として定義することができ、経済合理性に基づいて明確に定義することのできる概念であることが明らかとなった。 3.日本の流域ネットワーク社会の歴史研究によって、縄文・弥生時代以降我が国においては流域コモンズを保全するための経済社会システムが形成されていたことを確認した。そのような歴史的知恵を現代的に再生することによって流域コモンズを保全することを目指す社会システムと、社会起業家のビジネス・モデルによる流域コモンズ保全システムとの共通性を検討することは今後に残された課題である。 なお、本年度の研究成果の一部はヨーロッパ進化経済学会と日本公共選択学会において研究発表され、2編の論文としてまとめられた。目下、学会誌に投槁準備中である。
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