2006 Fiscal Year Annual Research Report
日本企業のR&D,知的財産権、市場競争の分析-国際競争力低下の可能性
Project/Area Number |
17530189
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
姉川 知史 慶應義塾大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (80159417)
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Keywords | R&D / 日本企業 / 投資 / 特許 / 生産性 |
Research Abstract |
初年度の作成したデータベースと予備的検討を利用して,次の実証研究とその結果の解釈を行った。第1は,企業の特許生産の大小を説明する要因分析である。ここでは特許取得数を被説明変数とする特許生産関数(patent production function)を推定し,説明変数にはR&D投資額,産業特性,国籍年度等の変数を用いた。対象企業は複数の産業分類に属し,それぞれ異なる市場競争の直面している。そこで,本研究ではいくつかの方法を併用してこの問題を回避した。 第2は,付加価値を用いた総要素生産性の推計を行い,特許の影響を評価した。総要素生産性は通常は経済全体あるいは産業を単位として,集計的データを用いて行われる。本研究ではこれを個別企業を単位として行った。 第3は,企業の経済的価値,特許の経済的価値の関係を推計する研究を行った。これは最初の2つの実証研究を包括するものであり,R&D投資,特許取得数が企業業績にどのように関係するかを検討した。 以上の実証研究結果を用いて,この研究目的であった,日本企業のR&D投資をめぐる競争力低下の可能性を検討した。そこでは外国のR&D指向型企業との比較で,R&D投資額の相対的減少の可能性,特許取得数の相対的減少の可能性,特許の経済的価値の停滞の可能性を,企業規模の制約,市場競争のあり方に関連して解釈を行った。日本政府の「知的財産立国」政策の妥当性を検証した。 また,これらの研究成果,解釈,前提となるデータを利用して,日本の「エレクトロニクス産業」,「日本の科学技術政策とイノベーション・システム」という事例教材を作成した。
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