2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17530206
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐口 和郎 東京大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (10170656)
|
Keywords | ワーキングプア / ワークフェア / 地域雇用政策 / 就業困難者 |
Research Abstract |
現在、所得の二極化、貧困層の固定化の問題に社会的な注目が集まっており、それに対応し、就業困難者への地域レベルでの支援も開始されている。本年度の調査の中心であった大阪地域は、この問題が最も深刻な地域であるがゆえに、地域就労支援事業に象徴される、雇用と福祉の連携の取り組みの積極的な展開が観察された。同時に、中高年者・若年者の就業への支援についても、就業困難者への絞込みの傾向がみられた。これらの支援策の成果についての詳しい分析は今後の課題だが、量的な意味で一定程度の成果を確認することはできた。 このような新しい展開の中で、就業困難者への支援策における課題がいくつか観察された。第一は誰が公的支援を受ける必要がある対象なのかという点での曖昧さの問題である。これは特に若年者支援において観察され、この領域ではデッド・ウエイト・ロス問題が発生する可能性が高い。関連して第二に挙げられるべきは、支援策の重複の問題である。これが最も深刻なのは生活保護受給者への就業支援策であり、国・府・市をそれぞれ中心とした諸施策が交錯した状況にある。これは各主体が、成果の挙げやすい対象者のみを優先的に扱ってしまうことによるクリーミング問題の土壌ともなりうる。第三は、ハローワークの機能の問題である。ハローワークは、若干の変化はありつつも、基本的には求職態度の確立した者を対象とするという原則は崩していない。だが地域においてさまざまな無形の資産を有しているはハローワークが、地域での総合的生活支援にどの程度まで関わっていくのかは、民間企業やNPOなどの動向ともあいまって、この領域での支援のあり方を規定していくキイファクターであることが確認された。 以上をふまえて、今後は、支援対象者に内在した政策効果や就業困難者を雇い入れる企業の側の動向の分析、ワーキングプア問題の深刻なUSでの支援策との比較等を行っていく。
|