2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17530206
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐口 和郎 The University of Tokyo, 大学院・経済学研究科, 教授 (10170656)
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Keywords | welfare to work / 低賃金労働市場 / 就労困難者 / labor market intermediary / 地域雇用政策 |
Research Abstract |
昨年度のロスアンゼルスでの調査を踏まえて、年度の前半はUSでの低賃金労働市場の実態、welfare to work戦略の現状を中心に研究した。その結果、同じ非正規雇用でも上昇へのステップとなるジョブといわゆるdead end jobの差異が存在すること、他方でその上昇は低賃金労働市場を脱出するほどのものではないことが明らかとなった。また、WIAやPRWORAなどの政策、そのもとでの営利組織の進出の中で、労働市場の仲介組織(labor market intermediary)も多様化し、低賃金層・貧困層への就労支援をミッションとする地域NPOの役割が深刻に揺らいでいることが確認された。 年度の後半は、平成17年度から進められてきた「生活保護受給者等自立支援事業」の成果について、東京(特に新宿)、北海道(特に室蘭と苫小牧)を事例に観察を進めた。昨年度のUSでの調査では、こうした施策の根本的問題点が浮き彫りとなったが、日本での3年間の経験からは、成果を上げている所とそうでない所との差異が顕著に観察された。就職率、そのなかでのフルタイム雇用の比率などにおいて、東京では相当程度高い成果が見られるのに対して、室蘭や苫小牧では数字の上では顕著な成果は見られない。これは当該地域での有効求人倍率の差、生活問題の構造の差異(例えば高齢貧困層比率等)が影響しているが、聞き取り調査からは、他の条件が等しい場合、ハローワーク側で就職希望者と面談し指導するナビゲイターの有無、能力が影響することが分かった。またこの事業に取り組むことで、就労困難者全般や地域の生活問題への対応という点で、変化が見られるハローワークも観察された。今後、市(区)独自で営利組織に委託して就労支援を行っている地域との比較もふまえて、日本でのLMIの棲み分けの可能性、地域雇用政策全般へのインパクト等について深く検討していくことが求められる。
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