2007 Fiscal Year Annual Research Report
わが国の診療報酬規制と公私医療機関の併存に関する新制度経済学的研究
Project/Area Number |
17530209
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
知野 哲朗 Okayama University, 大学院・社会文化科学研究科, 教授 (40171938)
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Keywords | 公私医療機関 / 診療報酬制度 / 医療制度 / 資源配分機能 / 取引費用 / property rights / hidden costs / 医療のIT化 |
Research Abstract |
医療分野では他の財・サービスに比べて情報の非対称性、公共財的性質、不確実性などの諸特徴が強く伴うことから、市場機構ではなく政府介入による「制度」(各種の制度や規制)という非市場型資源配分方式が一定の理論的根拠を持っている。しかし、「制度」は医療サービスの生産や利用の様々な段階における取引の仕組みを規定すると同時に、それに伴う取引費用の発生やその変化を引き起こす。この「制度」に固有な取引費用の存在が資源配分上、および所得分配上に大きな影響を与えている。本研究ではわが国の医療制度のなかでも、とくに診療報酬制度と公私医療機関の併存という2つの「制度」を取り上げ、それがもたらす経済的影響を具体的に解明することが本研究の目的である。 本年度は最終年であることから診療報酬制度と公私医療機関の併存という両制度の総合的な影響を検討した。また、両制度を中心とした医療制度のもとで、医療提供の効率性と安全性を左右するIT化の問題をも吟味した。診療報酬制度と公私医療機関の併存に関する影響については、それぞれの制度に固有な取引費用が発生することから、それを考慮した医療機関の選択行動が想定できた。したがって、経営主体別の選択行動の差異が予想されると同時に、市場構造上および市場成果上においても経営主体別の差異がデータ上、反映されていた。また医療のIT化問題については、現行制度のもとでは医療機関のIT化を促すような経済的誘因が希薄となる構造であった。医療分野におけるIT化の経済的成果は私的便益のみならず、医療の安心や安全といった制度に係わる社会的便益をも含まれることから、医療のIT化は公共経済学的観点を重視した視点から制度設計することが明らかにされた。
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Research Products
(2 results)