2005 Fiscal Year Annual Research Report
経済改革の諸類型の分析と進化ゲーム理論-中国・中東欧・ロシアの比較分析-
Project/Area Number |
17530213
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
森田 憲 広島大学, 大学院・社会科学研究科, 教授 (10133795)
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Keywords | 国際情報交換 / 中国:ポーランド / 体制移行 / 経済改革 / 経路依存性 / 直接投資 |
Research Abstract |
中国とロシア・中東欧諸国(なかでもポーランド)における経済改革の諸類型の比較分析を試みた結果、次のような興味深い事実が明らかになった。中国における改革は、1990年代後半以降、(従来の広東モデルと江浙モデルのうち)江浙モデルが外資主導型の江蘇省モデルと民営企業主導型の浙江省モデルとに分化し、浙江省モデル地域の発展が著しい。当該地域の発展の動因は、戦後の計画経済のもとで消滅することなく、(市場経済を受容する土台としての)「商人が育つ文化」が根強く存在していたことであり、当該地域の歴史・文化・制度に「埋め込まれて」いる「経路依存性」の存在にほかならない。浙江省モデル地域の発展パタンを中東欧、ロシアで見出すことは困難であり、経済改革の類型の特徴的なパタンと位置づけることが出来る。外資主導型の広東モデル、江蘇省モデルにおける特徴もまた、中東欧、ロシアでは見出すことが困難である。それは、華人ネットワークであり、中国の対内直接投資のほぼ50%を占める香港、マカオ、台湾におけるネットワークの存在である。中国への対内直接投資が経済成長を牽引する働きをしたことは疑問の余地がなく、そうした華人ネットワークの存在は経済改革に大きな役割を果たしていると思われる。 標準的な捉え方にしたがえば、中国は成長指向的な改革をすすめ、ポーランドはシステム変化指向的な改革をすすめてきた。そうした捉え方は適切である。そして改革の動きと関連して、中国では所得格差が、ポーランドでは失業率が大きな問題となってあらわれてきた。近年の動向は、中国においてシステム変化指向的な改革がみられるようになり、ポーランドにおいて成長指向的な性質の改革がみられるようになったといってよい。経済改革の諸類型はまたさまざまな変異をともなって新たな進化を遂げていると理解すべきものであろう。
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Research Products
(1 results)