2006 Fiscal Year Annual Research Report
専門職型ホワイトカラーの自律性・雇用安定性と分業・協業構造に関する調査研究
Project/Area Number |
17530217
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
石井 まこと 大分大学, 経済学部, 助教授 (60280666)
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Keywords | 専門職 / ホワイトカラー / 市場志向 / 管理職 / 就業条件 / 中高年 / 役割給 / 職能給 |
Research Abstract |
本年度は市場志向型の人事管理と専門職制度の関係について調べるため、民間大企業4社(金融・保険業2社、製造業2社)の本社人事部ないしは人事を担当する部署に対し、ヒアリング調査を行った。要約すれば次のようになる。1.専門職と管理職の融合が進んでいるが、本格的専門職は少ない。2.人員削減と組織のフラット化でホワイトカラー職務範囲が拡大している。3.専門性は育成されているが厚遇されていない。4.内部昇進が基本であり、管理職層の中途採用は少ない。5.賃金体系をより市場志向型へ変更している。以上から、専門職の育成は各企業とも消極的であり、内部昇進を基本とする選抜制度の一部として機能していた。ただし、これまでの雇用維持に重きが置かれた処遇専門職や深い専門性を評価した完全専門職とは異なる形態の専門性をもつ管理職を育成しようとしていることは注目すべき点である。つまり、ポスト不足に対して雇用維持として機能した処遇型の専門職制度の位置づけの見直しが進められており、中高年ホワイトカラーの雇用に揺さぶりが生じている。また、年功的昇進の基盤であった職能給を市湯価値で評価された役割給といった市場志向型の賃金体系へ移行する企業の例は、企業組織内に市場志向型人事管理を普及させ、現在その影響下にある。その普及や拡大はホワイトカラーの就業条件に影響すると考えられる。市場志向型の人事管理は、企業にとって適材適所の配置や効率的な人件費管理ができる一方、企業内での選抜の論理を強め、労働の特徴に裁量性や包括性をもつホワイトカラー労働の強度を上げる可能性をもっている。こうした市場志向型の人事制度が現場レベルでいかに展開しているかについては最終年度の調査で調査し、非正規雇用者との協業関係はそこで明らかにする。
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