2006 Fiscal Year Annual Research Report
日本の製造業の中国進出が国内の産業構造に及ぼす影響に関する調査研究
Project/Area Number |
17530218
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
阿部 誠 大分大学, 経済学部, 教授 (80159441)
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Keywords | 中国 / 電機産業 / 海外生産 / 地域産業 / 日系企業 / 産業空洞化 |
Research Abstract |
1990年代未以降、日本のメーカーは急速に中国に進出し、現地生産が拡大した。こうしたなかで日中間の経済的つながりは強まっている。本研究は、日本企業の海外生産が国内の産業構造と雇用に及ぼしている影響について、電機産業を対象にして分析することを課題としている。本年度は現地生産の経営指標等を分析するとともに、大連市に立地する日系企業に対して聞き取り調査を行なった。また、国内産業への影響については、電機・電子産業の企業が多い米沢市で聞き取り調査を行なった。 大連市は一部を除いて部品の生産が集積しており、生産基盤も整っている。労働力も質が高く、その確保に問題がない。日系企業にとって立地の条件は整っている。日系企業の現地生産は、大手完成品メーカーの場合にはグローバル生産を確立しており、その下で中国市場と日本市場にむけた生産拠点となっている。製品によっては日本国内でも同じ工程で同一製品を生産しており、中国への生産の一方的移転ではなく、両者は競争関係にある。そうしたなかで中国市場での販売拡大が課題とされるが、中国メーカーとの競争も厳しく、品質改善・不良率の低下などによるコスト削減が求められている。また、部品メーカーは日系メーカーの要請で進出するケースが多いが、生産の拡大のためには販路拡大が求められる。部品は世界各地にむけて輸出されるものが中心で、販売、開発・設計等も本社機能であり、現地生産は加工貿易型といえる。部品は多品種少量生産が多く、製品・生産量ともに変化が大きいことがコスト面の負担になっている。同時に中国企業との競争も激化しているが、コスト削減が難しい状況である。 一方海外生産の日本国内への影響では、電機・電子を中心にした産業構造をもつ米沢市の場合、最近は出荷額等が急速に伸びている。しかし、事業所や従業員の減少は90年代以来続いており、地域経済の再建が進んでいるといえない状況にある。
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