2008 Fiscal Year Annual Research Report
開放経済における金融政策転換時期に関するシミュレーション分析
Project/Area Number |
17530223
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
大津 武 Seijo University, 経済学部, 准教授 (10317323)
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Keywords | 政策コミットメント / 裁量的政策 / シミュレーション |
Research Abstract |
平成20年度の研究では、研究補助金により2007年までのデータが利用可能となったため、前年度の推計結果を再検討することから始めた。また、自然産出水準についても、さらなる検討が加えられ、前年度で用いた方法よりもデータ変換による変数間関係の歪みが少ないと思われる方法が発見・採用された。その研究成果の一部は、拙著“Seasonal Cycle and Filtering"(成城大学「経済研究」第185号、2009年7月発行予定)に発表されている。分析用のデータの変動度合や変数間の関係を検討した結果、1993-1997年、1998-2002年(貨幣量・金利と需要変数の関係希薄)、2003-2007年(貨幣量・金利と需要変数の関係回復傾向)に期間を分割し、各期間におけるマクロ需要関数の結果を参考にシミュレーション用のパラメタ値を検討した。シミュレーションにおいては、金融政策当局と民間は同一の損失関数の最大値を最小化すべく行動すると考えた。金融政策については、テーラールールに従う場合、初期の情報に基づいた最適政策を堅持する場合(政策的コミットメント)、各時点で最適化し直す場合(裁量的政策)の3つを考えた。最も早く景気が回復するのはコミットメントの場合であり、多くの場合ルールに従う場合の半分である。裁量的政策は回復を遅らせる結果となることが多い。1998-2002年の日本経済の状況を前提とすると、少なくとも10年程度の継続的金融的緩和政策が必要との結果がえられた。シミュレーション結果はパラメタ設定に強く依存するが、特に(主観的)割引因子の設定値に大きく影響され、日本の状況をより適切に示していると思われる値(例えば、0.8以下)を設定すると安定解が得られなくなる。この点は今後の課題とする。
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Research Products
(1 results)