2005 Fiscal Year Annual Research Report
途上国における資本取引自由化のSequencing(順序付け)のあり方
Project/Area Number |
17530236
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
荒巻 健二 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (90295056)
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Keywords | 資本取引自由化 / sequencing / 途上国 |
Research Abstract |
本研究は、資本取引の自由化が近年の途上国における国際金融危機の発生・深刻化にどのように関わったかを明らかにし、それにより危機の再発を回避するために途上国はどのような手順(sequencing)により資本取引の自由化を進めるべきか、また万が一危機が再発した場合において資本取引規制はいかなる役割を果たすべきかについて、示唆を得ることを目的とする。 17年度においては、アジア危機において最も深刻な影響を受けたタイ、インドネシア、韓国を含むいくつかのアジア諸国の資本取引自由化のプロセスに関する内外の資料を収集しつつ分析を行った結果、対外資本取引について非常に規制の強い国(例えば中国)と規制の弱い国(インドネシア等)、積極的(あるいは黙認的)に流動性の高い資金の流入をも容認した国(タイ、韓国)と逆に抑制を図った国、(安定的な)対内FDI促進を実現できた国(中国)とそうでなかった国等、資本取引自由化のあり方に国毎に相違が認められ、こうした相違がその後の資本の大量流入・大量流出と重要な関わりを有する可能性が大きいのではないかとの示唆が得られた。 平行して、わが国の資本取引自由化の経緯に関する調査を進め、その結果、わが国における特定の自由化措置(例えば非居住者自由円勘定の創設(1960年)や非居住者による対内証券投資の自由化)が、その後のニクソンショック(1971年)前後の市場の混乱期において、短期資金の大量流出入のチャネルの1つを形成したこと等が見出された。 ただ、上記の2つの調査を通じ、危機時においては貿易関連の資本フローも重要な要素であることが示唆されている。今後は、アジア諸国の資本取引規制の推移及び資本フローの内容を更に詳細に分析することにより、規制と危機との関係の一層の明確化を図りたいと考えている。
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