2006 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ連邦準備制度の生成に関する研究-中央銀行の「秩序管理」の視角から-
Project/Area Number |
17530242
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
片桐 謙 和歌山大学, 経済学部, 教授 (90233741)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大森 拓磨 和歌山大学, 経済学部, 准教授 (00334219)
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Keywords | 中央銀行論 / 連邦準備制度 / 秩序管理 / 貨幣秩序 / 信用秩序 / インディアナ / フリーバンキング / 国法銀行制度 |
Research Abstract |
連邦準備制度の成立過程を国内的ルートと国際的ルートに区別し、前者を更に「貨幣秩序」の管理と「信用秩序」の管理の二つに分けて考察した。 片桐は第一に、連銀成立に関する先行研究を批判的に検討した。国内的ルートに関しては、Livingston(1986)とMcCulley(1992)が、銀行制度改革の議論を、特にAldrich-Vreeland billとAldrich billに焦点をあてて詳細に分析している。「信用秩序」の観点から、彼らの研究は、Aldrich-Vreeland bill、あるいは資産通貨(Asset backed currency)が、恐慌を防止するのに有効な手段だったのか、否か、を明らかにしていないという難点がある。そこで連銀成立に到る銀行制度改革の議論の過程を、まず資産通貨を巡る議論、次に中央銀行に関する議論、そのうえで最終的にアメリカ型の中央銀行のあり方を巡る議論と推移していったと考え、それぞれの段階における議論の内容を整理した。そして国際的ルートに関しては、Broz(1997)が、貿易金融におけるポンド依存の比重を低下させ、ドルの国際通貨化を推進しようとしたNY金融界の動機を強調している。この点は、アメリカが金本位制に組み込まれていく一方で、金本位制を確立していった1900年前後からの継続性を視野に入れる必要があると考える。 第二に、連邦準備法の源はGlass-Owen billであり、恐慌防止を目的として、真正手形原理(real bill doctrine)が連銀の政策指標となったというのが、従来からの通説である。それに対して、第一に、Carter Glassよりも、Nelson Aldrichの役割を重視すべきであり、第二に、その根拠をAldrich-Vreeland billが恐慌防止策を謳っていないことに求め、第三に、連邦準備法では真正手形原理に関して明確に定めていないこと、を明らかにして、通説を批判した。 大森は「信用秩序」の管理の視角から、前年度に引き続き、インディアナ州の支店銀行制度と連銀生成の因果関連を考察した。
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