2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17530246
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
随 清遠 横浜市立大学, 国際総合科学部, 教授 (80244408)
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Keywords | 信用膨張 / 配当政策 / 銀行経営 / 不良債権 |
Research Abstract |
本研究は、過去20年間の銀行配当政策に焦点をあてて配当政策のあり方が経営パフォーマンスとどのようにかかわっているかを検証し、それによって株主によるガバナンスの有効性への評価を試みた。分析のポイントを要約すると以下の内容になる。 (1)、分析の対象となった1982年度から2003年度の22年間において、銀行の経営環境および銀行自身の経営パフォーマンスが激しく変化していたにもかかわらず、銀行の配当水準は安定していた。毎年の増配減配銀行数と配当据置銀行数(無配をのぞく)を比較した結果、配当据置銀行数が増配減配現行数を下回った年は、1987年度-1991年度と1999年度-2002年度だけであった。前者は、バブル期における信用膨張の時期とほぼ重なっており、この期間において配当据置から増配になった銀行が多かった。後者は、金融不安が顕著になってから、不良債権処理が厳しく求められた時期であり、逆に、配当据置から減配になった銀行が多かった。 (2)、バブル期は銀行の信用膨張期でもある。利潤最大化ではなく、規模追求が銀行の経営目的であるように思われる。配当の増減に影響を及ぼすのは資産規模や貸出増加率ではなく、利益指標である。銀行経営者の規模追求は、すくなとも株主への利益還元には反映されていない。 (3)、90年代後半以降の不良債権増減率と配当率との相関が薄い。個別破綻銀行のケースでは、銀行経営者は無理に配当水準を維持していたように思われるが、全体としては、配当維持政策と不良債権処理との間の因果関係が確認されない。 これらの証拠から、株主によるガバナンスの有効性を評価すると、次のようなことがいえよう。他の収益指標と比べて、配当金がもっとも安定的に推移していたから、その意味に限って言えば、株主利益が決して無視されたわけではない。しかし、バブル期の信用膨張と金融不安期における不良債権処理のいずれも配当率と関連をもたないから、そういう意味では、配当を通じて株主から銀行経営に及ぼす影響はほとんどないともいえる。
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Research Products
(3 results)