2005 Fiscal Year Annual Research Report
社会保障財政の新展開-地域間所得再分配と資源配分システムとしての医療・介護制度
Project/Area Number |
17530248
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokusei Gakuen University |
Principal Investigator |
安部 雅仁 北星学園大学, 社会福祉学部, 助教授 (90285544)
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Keywords | 社会保障 / 医療制度(医療保険システム) / 介護制度(介護保険システム) / 所得再分配 / 地域(地域の経済と財政) / 高齢化・少子化 / 公共事業 / 地方交付税 |
Research Abstract |
戦後以降、日本経済が成長する一方で地域間の経済格差が広がり、この不均衡を解消する上で地方交付税と公共事業を通した地域間の所得・資源配分が一定の役割を担ってきた。しかし20世紀末にはこうした政策が地域の不均衡解消にとって必ずしも有益ではないとの見方がなされ、社会保障の中でも医療・介護といった社会保険制度がそうした機能を代替するものとなりつつある。経済・財政的にいくつかの制約がある中で、こうした新しい財政機能がわが国の経済・社会においていかに展開され、いかなる効果が得られるかが問われている。 こうした問題意識のもと"地域"の経済・社会と"福祉"機能そしてこれを支える"財政"を把握する上で、平成17年度はいくつかの地域を対象に調査を行い「社会保障財政の構造と機能」を体系的に分析する準備を進めた。その中でもとくに、北九州市と高知市は財政状況が厳しく経済が低迷する中で高齢化が進んでいる一方、医療・介護を中心とする社会保険制度が所得再分配システムとして重要な役割を担っている。すなわちそれらの自治体では、財源(税と保険料)の流入額がその流出額を超過しているが、これに関する要因の一つは医療と介護の提供体制が(他の地域と比べ)整備されており、利用状況(平均在院日数や受診率、介護施設利用率など)が高いことにある。 なお海外の動向を把握する上で、アメリカ(NY)に出向きこれに関連する実情を調査した。貧富の格差が極めて大きいNYにおいても、主に低所得者を対象とする医療システム(MedicaidだけではなくChild Health PlusやHealth Insurance Plan in NYC)が社会保障財政としての所得再分配機能を担っていることが理解された。 来年度以降も他の地域(横浜市、仙台市、帯広市など)を対象に資料収集・調査研究を行い「地域間所得再分配と資源配分システムとしての医療・介護制度」に係る研究を継続する。
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