西ヨーロッパの生産システムに関する比較地域史的研究

2006 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 17530266
• Research Institution: Kyoto University
• Principal Investigator: 黒澤 隆文 京都大学, 経済学研究科, 助教授 (30294507)
• Keywords: スイス / 南ドイツ / イタリア北部 / 両大戦間期 / 生産システム / 大量生産体制 / 地域 / 合理化運動

Research Abstract

4年間の研究期間の2年目においては,初年度に引き続き,関連文献の検索・収集・精査に努めた。分析枠組み全体の検証のために,(1)既存研究の更なるサーベイ,(2)スイスの電機工業・機械工業・化学工業と,その在独・在仏子会社に関する関連論文の精査を行った。(1)においては主に,Zeitschrift fur Unternehmensgeschichteおよび,Schweizerische Zeitschrift fur Geschichteに掲載の緒論文,および,1990年代後半から10点近く刊行されているモノグラフの内容確認を行った。(2)のうち,現地調査に関しては予定より遅れ,いまだ企業史料館の調査には踏み込めず,主として同時代の業界誌を中心に企業情報の収集をおこなっている段階である。
実証面では以上の状況であるが,前年度のミラノでの研究会報告に基づき,8月のヨーロッパ経営史学会(コペンハーゲン),国際経済史会議(ヘルシンキ)で相次いで開催されたおよびにおいて,「ヨーロッパ企業の形成」を主題とするセッションに参加し意見交換を行った。これら一連の報告の主題は本研究の主題を一つの中核とするがこれよりも広く,本研究からするならばむしろ副産物というべきものであるが,2007年中にSpringer社から公刊される英語論文集に掲載される予定である。
以上の状況のために,いまだ具体的な歴史像を描きうる段階ではないが,アメリカナイゼイションの受容形態が西北ヨーロッパ地域とアルプス周辺地域で異なっているとの昨年度の暫定的な結論に関しては,その後かなりの逸脱例が見出され,また西北ヨーロッパ地域を単純化しすぎているとの指摘もあり,工場レベルでの検証をもう少し網羅的に積み上げる必要がある。