2006 Fiscal Year Annual Research Report
ものづくり地域での「信頼財」構築の比較研究-小・零細企業のグループ化を事例に-
Project/Area Number |
17530305
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
井内 尚樹 名城大学, 経済学部, 助教授 (60269785)
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Keywords | ネットワーク / 小・零細企業 / 業者 / 東大阪 / 愛知 / ものづくり / 信頼財 / 取引関係 |
Research Abstract |
東大阪地域と愛知のものづくり地域における調査を積み重ねながら明らかとなったのは、小・零細企業でのネットワーク化ならびにグループ化の違いは、生産品目による違いが大きいことがわかった。 愛知は自動車産業が主要である。輸送用機器関連部品ならびに機械設備関連部品は自動車のモデルチェンジにあわせたサイクルで生産を行っている。モデルチェンジにおける生産見通しは、5年程度である。モデルが終了すると、次の新モデルの生産へと移っていくのである。いったん生産し始めると5年程度は生産見通しがつき、自らの部品生産は維持されるのである。その場合の部品生産業者の関心は、生産量の拡大と価格低減をいかに実行していくかである。この両方が可能になれば上位に位置される取引先との関係は長期的信頼財が構築される。 東大阪の部品生産業者の生産品目は多種多様であり、愛知のように自動車部品と固定化していない。このことは生産部品の取引が長期化しないことを意味している。すなわち、3ヶ月で生産が終了する部品もあれば、6ヶ月続けての生産もある。しかし、自動車部品のように5年間も生産を続けるような部品などはないのである。 東大阪の小・零細企業の業者は、絶えず部品の生産がストップする「危機感」に直面している。部品生産の仕事がなければ、「自らが新しいものをつくろう」となり、横につながったネットワークを構築しようとする。他方、計画的に絶えず自動車部品を生産している愛知の小・零細業者は、「自らが新しいものをつくろう」と業者同士でネットワークをつくる必要性を感じない。東大阪と愛知での小・零細業者相互の「信頼財」形成にも多大にこの違いが影響している。愛知では縦の「信頼財」は形成できるが、小・零細業者間の横のつながりによる信頼財は構築されにくく、横のネットワーク構築には東大阪とは違った展開(生産場面以外での信頼関係づくりの場)が必要である。
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Research Products
(1 results)