2006 Fiscal Year Annual Research Report
会計ビッグバンの研究-歴史制度分析手法と比較制度分析手法を用いて-
Project/Area Number |
17530332
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
角ケ谷 典幸 九州大学, 大学院経済学研究院, 助教授 (80267921)
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Keywords | 会計ビッグバン / 新会計基準 / 割引現在価値 / 比較会計制度 / 会計測度 / 公正価値 / 棚卸資産 / 経済的利益 |
Research Abstract |
本年度は、歴史制度分析アプローチおよび比較制度分析アプローチに基づき、会計理論的および会計制度的研究を行った。本年度の研究成果はおおよそ次の通りである。 (1)会計ビッグバンの理論的柱ともいうべき「経済的利益概念」およびその技術的柱である「割引現在価値」について、1980年代までの議論を中心に整理した。この研究は、歴史制度分析を行ううえで必要不可欠なものである。その結果、経済的利益概念には大きく2つの系譜があり、それぞれ別の形で展開されていった可能性があることを突き止めた。一つは、Fisher-Canning的系譜で、経済学による会計学の植民地化を特徴とするものであり、他の一つは、Hicks-Alexander的系譜で、経済学的視点と会計学的視点の調整を図ろうとするものである。 (2)社債の時価評価論、退職給付の即時認識論および資産除却債務の認識論といった会計制度的議論を題材にして、会計ビッグバンおよびそれ以後の会計構造の特徴を明らかにした。分析の結果、3つのケースいずれについても、「名目資本維持-総資本概念(エンティティ観)」から「財務的資本維持-自己資本概念(株主中心観)」への転換がみられることを指摘した。 (3)国際的動向に目を転じると、1990年代半ばから割引現在価値観が大きく転換したことが観察された。つまり、その時点から、原価(入口価値=キャッシュ・アウトフロー)に代えて公正価値(出口価値=キャッシュ・インフロー)を積極的に用いようとする傾向、非貨幣項目にも割引現在価値あるいは期待キャッシュフロー・アプローチを適用しようとする傾向が観察されるようになってきた。 (4)わが国でも平成20年4月日以降開始する事業年度から棚卸資産の低価評価が強制されるようになるが、これは固定資産の減損処理とのアナロジーで考えることができ、会計ビッグバンの範疇に含めて検討すべき課題である。いかなる時価概念を用いるかによって、当該時価と割引現在価値との関係ひいては会計構造が変わりうることを論証した。
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Research Products
(4 results)