2007 Fiscal Year Annual Research Report
会計ビッグバンの研究-歴史制度分析手法と比較制度分析手法を用いて-
Project/Area Number |
17530332
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
角ケ谷 典幸 Kyushu University, 大学院・経済学研究院, 准教授 (80267921)
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Keywords | 会計ビッグバン / 割引現在価値 / 会計的利益 / 経済的利益 / サービス・ポテンシャル / 包括利益 / ウィンドフォール / インタンジブルズ |
Research Abstract |
本年度は、本研究課題の総括として、歴史制度分析アプローチおよび比較制度分析アプローチを用いて、会計ビッグバンの歴史的、理論的および制度的分析を行った。本年度の研究成果は、おおよそ次の通りである。 (1)現在価値会計を歴史的に考察すると、次の3つのプロセスに分けることができる。第一段階は、生成期であり、直接的測定(フレッシュ・スタート測定)、期待キャッシュフロー・アプローチおよび会計的配分(利息法)の原形にまで遡ることができた。第二段階は確立・展開期であり、1930年代から1970年代中葉までの制度関連領域では、会計的配分一辺倒であったことを突き止めた。第三段階は転換期であり、1990年代以降、直接的測定および期待キャッシュフロー・アプローチへの重点シフトがみられるようになってきたことを確認した。 (2)経済的利益概念と会計的利益概念は古くから対立の構図として捉えられてきたが、両概念の関係が歴史的にいかに捉えられてきたのかについては明らかにされてこなかった。本研究では、大きくFisher-Canning的系譜とHicks-Alexander的系譜とに分けられることを突き止めた。また、両概念の間に存在する2つの境界、すなわち原価主義会計と時価(主義)会計を分かつ境界および時価(主義)会計と現在価値会計を分かつ境界に注目すると、会計ビッグバンの全体的・社会的影響は大きく純利益と包括利益を巡る問題と自己創設暖簾(インタンジブルズ)を巡る問題に集約できることを明らかにした。 (3)同時に、公正価値会計の台頭に伴って、現在価値観が大きく変容し、会計ビッグバンもその影響を多分に受けてきたことを指摘した。具体的には、1990年代以降の国際的な制度関連的な議論のなかで、会計的配分の目的が変化し、会計的配分から直接的測定に向けて変化してきたこと、さまざまな会計基準において経済的効率性の観点が前面に打ち出されるようになったこと、そして伝統的な会計諸概念(実現概念、対応原則、純利益概念)が大幅に後退してきたことを明らかにした。
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Research Products
(6 results)