2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17530356
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
樽本 英樹 北海道大学, 大学院文学研究科, 助教授 (50271705)
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Keywords | 国際移民 / 国家主権 / 市民権 |
Research Abstract |
今年度は、昨年度の実績を踏まえて、国家主権の衰退に関する理論モデルの検討を行っていった。ポイントは、国際環境を要因としていかにして理論モデルに編入するかであった。中心となったのは、国際人権規範モデルの構築である。これまでは、国際レジームがいかにして国内の市民権制度に影響を与えるかが明らかになってはいなかった。そこで、いかにして国際人権レジームの効果を理論化するかが研究課題となった。様々な試行錯誤の中から構築されたのは、国家社会化モデル(state socialization model)である。このモデルは、Talcott Parsonsの個人行為者に関する社会規範の社会化モデルの着想から、Risse、RoppeとSikkinkのモデルを改変したものである。この国家社会化モデルによって、国家が国際人権規範を段階的に受け入れていく過程が明確化された。その段階間の移動には、促進要因(facilitating factor)が必要であることも明らかにされた。 さらに国家社会化モデルを具体的ケースに適用した。HKTモデルの境界2に関わる日本の移民市民権政策のうち近年急速に変化が見られた興行ビザ政策がそのケースである。国家社会化モデル上において、同政策に関して日本は段階2に移行し、かつ促進要因の観点からは「国際政治圧力かつ国家威信型」であることがわかった。すなわち、「単一官僚主権」を誇る日本が国際人権規範を第2段階まで社会化したのは、国際政治圧力がかかり、かつ国家威信を揺さぶられたという2つの条件が揃ったからであった。 以上の研究から明らかになったことは、各国の移民市民権政策に対する国際人権レジームの効果が国家社会化モデルの諸段階と、促進要因の種類という2つの軸で比較可能だということである。この研究実績は、次年度以降の実証研究に大きな可能性を開くことになった。
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Research Products
(1 results)