2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17530362
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
寳月 誠 Ritsumeikan University, 産業社会学部, 教授 (50079018)
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Keywords | シカゴ学派 / 逸脱 / 社会解体 / コントロール / ビジネスとしての逸脱 / コミュニティ |
Research Abstract |
シカゴ学派のモノグラフの再検討を通じて、逸脱理論を構築するのが本研究の目的である。モノグラフを「移民と逸脱」「都市コミュニティの社会解体と逸脱」「ビジネスとしての逸脱」の3つのテーマに分けて検討した。明らかになった点は、第1に「社会解体」を現代のように規範や社会的コントロールの衰退と狭く捉えるのではなくて、マクロな社会過程や政治過程との関連で捉える必要があること。第2に「組織犯罪」と「ホワイトカラー犯罪」を分けるよりも両者を「ビジネスとしての逸脱」という概念で分析する方が両者の特徴を正確に把握できること。これらの点を踏まえ、さらにシカゴ学派の方法論から得た「社会的世界論」の視点に基づいて、逸脱の一般理論を命題形式で示せば以下のようになる。 1.逸脱は社会的世界の社会解体と再組織化の中で起こる現象である。 2.社会解体はマクロな社会過程(産業化・市場化・都市化)と政治過程(住宅・土地政策を通じて貧困層の特定地域への隔離)に組み込まれた行為者が、各自の社会立場に応じて直面する問題状況である。 3.行為者は問題状況に対応して社会的世界の再組織化を試みる。そのひとつの手段とし逸脱が選択される。特に逸脱が合法的行為よりも安全で、容易であることを身近な人から教えられ、実証されることによって逸脱は発展する。 4.逸脱を組み込んだ社会的世界が安定するには、コントロール機関や政治家とのネットワークや逸脱者間での平和共存、さらに逸脱に好都合な法制度の構築などの組織化が必要となる。 5.いかなるコントロールが選択されるかは、社会状況と有力な行為者の政治的駆け引きによって決まる。例えば、目に見えるような姿で逸脱への対応を示したい意向が支配者に強いときには、コントロールは実質的な効果よりも、儀礼的なパーフォーマンス中心になる。また逸脱を道徳問題とみなす政治風土の下では、合理的選択によるコントロールは選択しにくい。
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