2005 Fiscal Year Annual Research Report
地方分権化時代における地域的アクターおよびローカルガバナンスの可能性に関する研究
Project/Area Number |
17530370
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
中西 典子 愛媛大学, 教育学部, 助教授 (90284380)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡村 茂 愛媛大学, 教育学部, 教授 (10224057)
北島 健一 松山大学, 経済学部, 教授 (60214798)
清水 洋行 東京学芸大学, 教育学部, 講師 (50282786)
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Keywords | 地方分権 / 地域的アクター / ローカルガバナンス / 市民的公共性 / 非営利・協同組織 |
Research Abstract |
本年度はまず、東京都および松山市にて研究会を2回開催し、研究分担者各々がこれまで蓄積してきた調査研究内容の相互認識・共有や今後の本研究計画に向けてのスケジュール調整等を行った。その上で、フランスにおける地方分権化の実態調査をメインに据えることとし、岡村教授を中心に実施した。以下、調査概要を記し実績報告とする。 まず、国立パリ政治学院附置研究機関であるフランス現代政治研究センター(CEVIPOF)の招聘研究員資格を得て、当センター所長のパスカル・ペリノー氏との研究討議や、複数の国立研究所研究員(CNRS)との意見交換、資料調査を行った。討議内容は以下の通りである。まず所長の見解として、第一に、フランスの分権化改革は、ミッテラン大統領下で断行された83年ドゥフェール改革において大きな前進をみたものの、県や市町村の力が依然として強く、州の力はドイツのラントに及ばないこと、第二に、したがって狭い地域文化への固執がみられ、有効な地方分権化改革が停頓していること、第三に、フランス国民の主要な傾向は国家主義であって、自由な市場への要求は弱い、という諸点があげられた。それに対し、当方からは、分権化が文字通り実現されるならば、民主主義の新しい可能性を育む条件を提供するであろうこと、新自由主義は分権化の阻害要因として、経済的な側面にとどまらず政治的にも批判的検討を要するということ、政治腐敗がフランスでは問題となり分権化を阻んできたが、その点のより深化した研究が必要であるという諸点を指摘した。資料調査では、パリ政治学院の図書館やドキュモンタシオン・フランセーズ(Documentation francaise)に拠り、複数の資料を収集した。また、コンセイユデタや上院出版局等、地方自治に深く関わる諸機関を視察・調査した。 次に、ディジョンのブルゴーニュ大学を訪れ、パトリック・シャルロ、ヴェロニク・パリゾ、フィリップ・イカールら同大学法学政治学部の教授グループと会合を持ち、分権化改革について討論し、聞き取り調査を行なった。特に、分権化を阻んでいる政治的な公選職責の兼任については、それが主要な障害となっているという認識において見解の一致を確認できた。また、同大学を通じて、コマディ(COMADI : Communaute de l'agglomeration dijonnaise)=大ディジョン市町村連合本部を訪問し、事務局の研究・広報担当官であるサビンヌ・パルメール氏にインタビューを行い、市町村連合の取組みを示す貴重なデータを得た。さらに、州議会では国際関係担当副議長であるマリー=フランソワーズ・ミュレール氏に、州機構の発展と問題性についての聞き取り調査を行ない、州として、各種の補助金を通じて国際的な学生研修制度を充実させ、地域の幹部を育成することが分権化の枢要なポイントのひとつである、との知見を得た。
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