2006 Fiscal Year Annual Research Report
地方分権化時代における地域的アクターおよびローカルガバナンスの可能性に関する研究
Project/Area Number |
17530370
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
中西 典子 愛媛大学, 教育学部, 助教授 (90284380)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡村 茂 愛媛大学, 教育学部, 教授 (10224057)
北島 健一 松山大学, 経済学部, 教授 (60214798)
清水 洋行 東京学芸大学, 教育学部, 講師 (50282786)
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Keywords | 地方分権 / 地域的アクター / ローカルガバナンス / 市民的公共性 / 非営利・協同組織 |
Research Abstract |
本年度は、研究分担者の清水洋行氏や北島健一氏がこれまで継続してきたコミュニティビジネスに関連する研究会とジョイントするかたちで、京都市およぴ東京都にて研究会および研究打合せを数回行い、研究分担者各々がこれまで蓄積してきた調査研究内容の相互認識・共有化を行った上で、欧州において新たな地域的アクターとして注目されている社会的企業をめぐる研究動向についての知見を得た。また、清水氏やその他本研究課題に関心の近い研究者とのコラボレーションを軸に、当面は、英国における地域調査をメインに据えることとし、調査内容・聴き取り項目の検討や実施のためのスケジュール調整等、本年度後半はそのための準備作業に取りかかった。 調査フィールドは、移民や下層労働者の多い貧困地域として歴史的に知られているロンドンのイーストエンドを選定した。なかでもブレア政権下で進められてきた公民関係の刷新(地方政府や民間団体への分権化政策やコミュニティにおけるパートナーシップ政策)やWelfareからWorkfareへという流れのなかで、社会的に排除されてきたマイノリティ層を含み込んだかたちでの地域での雇用創出とコミュニティの再生をはかってきたタワーハムレッツ区を対象とし、2月から3月にかけて現地踏査を実施した。現地では、当区の地方政府をはじめ、保健センターを基盤にした新興の社会的企業、St.Margaret HouseやAge Concern等の伝統的なチャリティ、地域の様々なボランティア団体で構成されるコミュニティフォーラムやコミュニティエンパワメントネットワークなどに聴き取りを行うなかでタワーハムレッツという地域の実情を把握するとともに、ロンドン大学政治経済学部のクマール教授やケント大学社会政策学部のケンダル教授と面会し、英国における社会福祉政策の現状と課題についての見識をうかがった。チャリティの長い伝統を持っ英国において、雇用を創出し事業化をはかっていく社会的企業の成長・発展は、市民社会をめぐるこれまでの政策や実践面における大きな転換をせまるものでもある。地域的アクターが多様化するとともに、個々の組織・団体の維持発展が、政府との関係や事業化戦略によってより影響されざるを得なくなっているという現状は、日本においても同様である。多様な地域的アクターが、コミュニティレベルで持続的なパートナーシップを結び、質の高いローカルガバナンスをいかに実現していけるのかという点について、実証研究をふまえ、さらに検討を進めていきたい。
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