2008 Fiscal Year Annual Research Report
地方分権化時代における地域的アクターおよびローカルガバナンスの可能性に関する研究
Project/Area Number |
17530370
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
中西 典子 Ehime University, 教育学部, 准教授 (90284380)
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Keywords | 地方分権 / 地域的アクター / ローカルガバナンス / 市民的公共性 / 非営利・協同組織 |
Research Abstract |
本年度は、本研究課題の最終年度として、これまでに蓄積してきた理論・政策レベルの研究と、現地調査を通して新たに得られた経験的研究との統合をはかってきた。理論・政策レベルにおいては、ポスト福祉国家体制期の福祉社会における多様な地域的アクターが、コミュニティレベルでの官と民を越えたパートナーシップに基づき、持続的なローカルガバナンスを形成していくことが展望されたが、実際にはそれに伴う様々な問題も生み出されていることが、経験的研究を通じて明らかとなった。 経験的研究では、英国ロンドンのタワー・ハムレッツ区の現地踏査を通じて、地域戦略パートナーシップに着目してきたが、そこで得られた知見として、戦略的枠組みとしてのパートナーシップが一定の効果を発揮しながらも、(1)サード・セクターのサービス・プロバイダー化と分極化・系列化、(2)パートナーシップというフレームワークによる柔軟性の欠如、(3)政府によるリスク・マネジメントとしてのパートナーシップと草の根活動とのギャップ、などの問題が析出された。近年の日本における分権改革論議では、英国の政策に基づき、「戦略的な地域経営」の本部としての地方自治体とその住民との協働によるローカルガバナンスの実現がめざされているが、当の英国での経験を踏まえ、その受容における課題や変容の方向性について吟味していく必要がある。また、本研究の連携研究者である岡村茂氏が中心となり、「地域における大学の役割-地方分権化と知の役割」と題する日仏修好150周年記念国際シンポジウム(市民に公開)を、2008年12月6日に愛媛大学地域創成研究センターの主催で開催した。ブルゴーニュ大学、パリ政治学院、フランス国立統計経済研究所に所属するフランスの研究者4名を招聘し、日・仏両国の地方分権化改革の現状と課題、地域社会の未来の担い手や大学の新たな役割について討議した。この成果は、『地域創成研究年報』第4号(愛媛大学地域創成研究センター)に発表した。
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