2006 Fiscal Year Annual Research Report
グローバリゼーション状況における日本型新宗教の可能性についての比較社会学的検討
Project/Area Number |
17530378
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
秋庭 裕 大阪府立大学, 人間社会学部, 助教授 (40222533)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川端 亮 大阪大学, 大学院・人間科学研究科, 教授 (00214677)
稲場 圭信 神戸大学, 発達科学部, 助教授 (30362750)
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Keywords | 日本型新宗教 / グローバリゼーション / SGI / 創価学会 / 現世肯定的救済 / 社会貢献活動 / アメリカ |
Research Abstract |
今年度は、アメリカ合衆国のSGI(創価学会インターナショナル)に焦点を絞り調査を行った。6月にロサンゼルス、11月にはニューヨークにおいて(他の研究費による)、2月には再びロサンゼルスにおいて調査を実施した。 教団の基礎的データの収集に努めるとともに、25人の信者に対する詳細なインタビューを実施した。 昨年度の日本人・日系人の多いハワイにおける調査と照らし合わせると、合衆国本土の調査において新たな知見が得られた。それは、米本土を東部に移動するにつれ日本人・日系人の人口が減少するとともに、信者も非日系人が増加し、日蓮法華に基礎をおく創価学会の信仰の、アメリカ的多文化・多民族的な状況への定着ということである。 つまり、60-70年代の西海岸においてヒッピー文化とSGIの教えが共鳴し、信仰が受容される基礎が確立したことである。これは、キリスト教文化のオルターナティブな価値観として、教えが選択されたことを意味している。アメリカSGIは、日本人・日系人から、対抗的文化の担い手であるような若者を中心とする社会層に広まったのである。 次の段階は、ニューヨークにおいて顕著に観察できる。多様な文化と価値観の錯綜するこの大都市で、SGIは、それらの人びとを惹きつけている。つまり、非WASPの人びとである。アメリカ合衆国の中心的な社会層の周辺に位置するこれらの人びとは、SGI運動の強調点の一つである人権の尊重という価値観に共鳴し、社会貢献活動を担っている。 日蓮法華の教えは、戦後日本社会を土壌として創価学会という結実をみたが、21世紀アメリカにおいて、また異なった実を結びつつあるのである。SGIのアメリカにおける発展は緒についたばかりであるが、ここに、日本型新宗教とそれを産み出す現世肯定的な救済観をもつ日本仏教の一典型の、グローバリゼーション時代における「可能性」を検討することができる。
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Research Products
(7 results)