2006 Fiscal Year Annual Research Report
離島における記憶の伝承と日韓海上交流史-壱岐朝鮮人海難事故をめぐって-
Project/Area Number |
17530406
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Research Institution | Nagasaki Wesleyan University |
Principal Investigator |
亘 明志 長崎ウエスレヤン大学, 現代社会学部, 教授 (60158681)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
志村 哲郎 山口県立大学, 社会福祉学部, 教授 (50264982)
小林 知子 福岡教育大学, 教育学部, 助教授 (10325433)
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Keywords | 壱岐 / 朝鮮人海難事故 / 記憶 / 記録 / 戦後補償 / 社会運動 / 強制動員 / 遺骨調査 |
Research Abstract |
平成18年度は、海難事故遭難の慰霊碑、遺骨の問題等をめぐって、戦後補償問題や遺骨問題の文脈の中で、壱岐における海難事故の遺骨問題がどのように位置付けられるかを中心に調査を行った。 平成17年に強制動員真相究明ネットワークが立ち上げられ、日韓の間で懸案になっている遺骨問題に関する調査が進行しつつある。本件研究テーマもこの遺骨問題との関係を詳しく検討する必要が生じてきた。というのは、壱岐における終戦直後の朝鮮帰還船の海難事故について、広島の徴用工(被強制連行者)の帰還船であったということを前提にして25年ほど前に大掛かりな調査が行われたという経緯があったからである。私たちの調査では、以前の調査が前提にしていた徴用工の帰還船ではないということは確認できたが、終戦時に朝鮮に帰還しようとした人たちはどのような人たちで、日本で死亡した人たちの遺骨はどの程度、現在も日本に残っているのか、ということについては、確かなことはわかっていない。 そこで、平成18年度は、強制動員真相究明ネットワークを中心とした、遺骨発掘調査に参加することとした。この発掘調査は平成18年8月、半月ほどかけて実施されたが、北海道の旧陸軍浅茅野飛行場の建設に動員された朝鮮人徴用工の遺骨発掘を目的とした調査で、歴史学、考古学、社会学、文化人類学など多領域の専門家が参加したプロジェクトである。 この北海道での発掘調査をはじめ、各地での調査結果を総合すると、日本に残存している朝鮮人の遺骨、特に被強制連行者の遺骨は予想されたほど多くはないことがわかってきた。そのため、朝鮮人の強制連行強制労働の実態、歴史的意味等について、事実関係を含めて再検討すべきことがわかった。また韓国における戦後補償問題の動きを調査するため、10月に韓国のソウルを中心とした調査を行った。 これらの調査と併せて、壱岐における海上交通路、特に朝鮮との関係を知るため、民俗誌的資料の収集を行った。 以上の成果を踏まえて、平成19年度はいくつかの補足的調査を行い報告書をまとめる予定である。
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