2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17530441
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
小松 理佐子 日本福祉大学, 社会福祉学部, 助教授 (40301618)
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Keywords | 中山間地域 / 条件不利地域 / 定住 / 地域福祉計画 / 地域福祉 / 福祉ガバナンス / 地方自治 |
Research Abstract |
本研究は、(1)山形県最上町をフィールドとした地域福祉計画の進行管理におけるアクションリサーチをもとにした仮設の構築と、(2)他の条件不利地域の実態把握による仮説の検証、という二本の柱によって構成されている。 第一の柱である山形県最上町をフィールドとした研究では、平成l7年度に策定された地域福祉計画の実施段階でのアクションリサーチを行った。具体的に平成18年度は、(1)行政と住民によるプロジェクト委員会への介入、(2)集落モデル事業の実施地域(東法田地区)おける集落再生事業への介入、(3)マンパワー養成研修の実施、を行った。 第二の柱である他の条件不利地域に関する実態調査では、中山間地域である高知県土佐町、離島地域である沖縄県宮古島市ならびに沖縄県庁、において調査を行った。 これらの研究を踏まえて明らかになった点は以下のとおりである。 一つは、介護保険制度に象徴されるように、住民の負担とサービス提供量を基礎自治体で決定する現行のシステムのもとでは、当該地域で提供されるサービスの水準(コミュニティ・ミニマム)を、地域で決定する必要があるということである。都市部でのサービス水準と同様の水準を条件不利地域で求めることは現実的ではなく、負担と受益とのバランスが重要となってくる。 二つ目には、制度的サービスでは対応できない部分に対応するための地域におけるサービスの創出ないしは相互扶助システムの構築がなされる必要となる。これが実現することにより、条件不利地域と都市部との「格差」ではない、地域特性を活かした福祉システムとなるのである。それは、集落を単位としたものと、当該自治体全域を単位としたものと、地域の状況によってはその両者の中間に位置する単位のものとが想定される。 三つ目には、そのような条件不利地域の「自立」を可能にするのには、基礎自治体における自治力の向上が不可欠となるということである。自治力の向上の一つの手段として地域福祉計画の策定の機会が有効であると考えられる。 四つ目として、このような地域独自の福祉ガバナンスの構築を実現するためには、専門職の配置が重要な鍵をもっているということである。条件不利地域において専門職には、地域の資源を動員することのできるコーディネート力が期待される。 五つ目として、条件不利地域においては専門職の確保が困難となっている実態が見受けられる中で、少数の専門職を効果的に機能させるためのシステムが必要になる。 最終年度である平成19年度は、これらの仮説の検証を行う予定である。
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