Research Abstract |
労働時間の長さと過重労働による健康被害については,直接的な因果関係が明確ではなかった。先行研究からは,勤務形態や作業の質,職場の人間関係,基本的な日常生活などによりかなり異なる影響が予測されてきた。今回は,特に日常生活の睡眠の問題との関連を取り上げ,予備的調査からはじめた。 本年度は,勤務全般に関する変数と睡眠に関わる変数に関して,疫学的な調査をまず実施した。従業員50人以上規模の地元事業所に勤務する正規従業員に調査し,885人(男性513人,女性372人)の回答を分析対象とした。結果は,勤務形態別(日勤者,3交代,2交代,不規則)と性別の2要因分散分析を行ったところ,勤務形態の主効果が,就床・起床時刻,睡眠時間,食事の不規則さや運動量の違いに関して認められた。就床時刻で不規則群が日勤群に比べ有意に遅く就床しており,睡眠時間で3交代群が2交代群より短時間であった。 また,SDS(抑うつ度)を目的変数として,労働時間,残業,通勤時間,就床時刻,起床時刻,睡眠時間,休日の眠気を説明変数とした重回帰分析を行ったところ,休日の眠気が有意な説明変数であり(β=.232,p<.001),睡眠時間では有意な傾向があった(β=.64,p<.08)。先行研究にならい,SDSの値について,就床時刻の違いによる分散分析を行ったところ有意な違いが見られた(F=3.64,p<.01)。23時台に就床する群と0時台以降に就床する群の間で.05水準で有意差があった。 これらの結果を踏まえ,協力承諾者を募り,メンタルヘルスをはじめとした健康被害について,生活・睡眠のパターンのより具体的な実態を明らかにするため,活動量記録装置(Actiwatch-L)を用いて,活動パターンの記録を現在進行している。 なお,今回の調査では予想外に交代制勤務者の数が少なかったため,さらに被験者を増やし,その結果を受けてから,ハイリスク群への介入(光照射装置と睡眠表記録を用いたコンサルテーション)を行うことにしている。
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