2005 Fiscal Year Annual Research Report
日本人引退海外滞在者と留学者の異文化体験:文化規範への認知的評価の変化と関係要因
Project/Area Number |
17530469
|
Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
小柳 志津 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化研究科, リサーチフェロー (20376990)
|
Keywords | 文化接触 / 海外滞在 / 文化規範 / ロングステイ / シニア層 / 認知的評価 |
Research Abstract |
海外滞在しているリタイア後のシニア層と留学生を対象に考えているが、今年度は先行研究のほとんどないシニア層についてを中心に調査を開始した。調査地はシニア層が多く滞在するオーストラリアとタイとし、海外滞在中の対象者と直接会って半構造化面接を行なっている。この2ヶ国を選択した理由は、両者ともに退職者(年金)ビザがありリタイア後の海外滞在者が多い点、欧州系住民がマジョリティのオーストラリアとアジア系住民がマジョリティのタイというコンテクストの違いが滞在者に与える影響を比較するためである。現地での対人接触や文化規範に関して面接を行うとともに、彼らが滞在するコンテクストを把握するために現地の生活のフィールドなどを参与観察して質的分析を行なっている。また、現地の日本人滞在者を良く知るロングステイ関係のエージェントや不動産関係者からも聞き取り調査を行い、全体像の把握に努めた。 "日本人引退シニア層海外滞在者"の属性や背景は非常に多様で、オーストラリアでは夫妻で滞在するケースがほとんどであるが、タイ(チェンマイ)の場合は夫妻での滞在とともに男性単身での滞在が多く見られる。インタビューは個別に行い、夫妻で滞在の場合は2名同時に参加していただいた。現在まで合計24組(43名)から調査データを得ている。現地での対人交流は、在住日本人と現地住民との接触が中心であるが、その交流の内容やレベルは個人差が大きく、ほとんどの時間を夫妻のみで過ごすというケースも少なくない。ホスト国の文化規範への評価は、タイ滞在者の方が日本との差異を大きく感じており、オーストラリア滞在者は日本との差異とともに共通点を挙げるケースが多く見られた。特筆すべき点は、日本人一般の特定の文化規範のあり方に対し否定的で、海外に出ることでその規範から開放されるという意見が多く述べられた点である。
|