2006 Fiscal Year Annual Research Report
幼児期における時間的拡張自己の発達とその機能に関する研究
Project/Area Number |
17530477
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
木下 孝司 神戸大学, 発達科学部, 助教授 (10221920)
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Keywords | 幼児期 / 時間的拡張自己 / 未来を予測する能力 / 未来への不安 |
Research Abstract |
本研究は,幼児が過去や未来に視点を動かしてメンタル・タイムトラベルを行い,時間的拡張自己を構成するプロセスを検討し,その発達が幼児の生活世界にどのような変化をもたらすのかを検討することを目的としている。2006年度は,以下の2つの点から検討した。 1.幼児期における未来の出来事を予測する能力の発達:未来の自己や外界の状況を予想して,行動を計画する能力の発達を調べた研究を展望し,「トリップ課題」と呼ばれる課題の改良を行った。これは,夏の海や冬の山に持って行く持ち物を選んでもらう課題で,未来の出来事に関する予測する能力を調べるものである。本研究では「もしかすると必要になるかもしれないもの」という項目(例:バンドエイド)を加えて,不確実な出来事を予想しそれに対処する能力について調べた。その結果,4歳頃より,夏の海や冬山で必要となるものを選ぶ傾向が高まり,また「必要になるかもしれない」項目の存在についても考慮することが可能になった。他方,5歳後半以降で,使用が不確実な項目をあえて選ばない子どもが見られ,その理由を尋ねると,その可能性の低さを答えたり,それが起こった場合の対処法を答えたりしていた。5歳後半で出来事の生起確率の判断がより精緻になる可能性があり,さらに詳細な発達的検討が求められている。 2.未来の出来事への期待と不安:今回対象とした保育園では,年齢ごとに,綿密な計画のもとに合宿が保育計画に盛り込まれていた。それぞれ実施前に,この合宿にむけた期待と不安について個別にインタビューを行ったところ,1の課題において不確実な出来事に関する判断ができていた子どもは,これから迎える合宿に対して期待と同時に不安も感じていることが明らかになった。未来の出来事に関して一定の見通しがもてているほど,未来への不安も喚起されやすいことが示唆された。
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Research Products
(3 results)