2006 Fiscal Year Annual Research Report
科学的知識のマッピングスキルの熟達を促す教授方略の提案
Project/Area Number |
17530481
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
藤田 敦 大分大学, 教育福祉科学部, 助教授 (80253376)
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Keywords | マッピング / 概念般化 / 教授法 / 概念操作 |
Research Abstract |
問題構造の特性に合わせて,既有の知識やルールの構造を変換・調整して応用的に適用することを,知識-問題領域間のマッピングと呼ぶ。本研究では,このマッピングの熟達化を促すには,いかなる教授方略が効果的であるかを検証することを目的としている。特に本年度の研究では,寺尾・楠見(1998)が提唱した構造生成アブローチのモデルを理論的な背景とし,既有の概念構造を変換操作するための知識が,このモデルにおいて知識般化の促進に必要とされる「解法構造を新たに生成する知識」を構成する要素の一つとなりうるという予測を立て,既有の知識に対する変換操作の可能性と応用問題への般化可能性との量的な関係について調べた。 具体的には,「気圧概念」の学習事態に注目した。まず,学習者が基本的な学習を行った気圧概念(気圧ルール)の構造に対して,問題状況に合わせた可逆的な操作を自発的に実行可能であるかという観点から,概念構造に対する操作可能性を測定した。また,気圧の働きによって生じる様々な自然現象を説明する際に,学習した気圧概念をどの程度適切に適用することが可能かという観点から,概念の般化可能性を測定した。重回帰分析を行った結果,学習した既有の概念構造に対する操作可能性が,般化可能性を予測する有意な変数となることが明らかになった。 この結果は,学習した科学的な概念やルールの般化を促進するために,その概念の構造に対する変換操作を学習することが有効であることを示唆している。そこで,次に,このような変換操作を学習する教材を考案し,その効果を調べる実験を試みた。ただし,現時点では,十分な変換操作の学習を達成する教材作成には至っておらず,この点については,次年度の研究課題として残された。
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