Research Abstract |
他者との対話場面では,自分が話している相手がどのような人柄の人間なのかということを,常に推し量りながら会話を進行させていく。特に,電話などでの音声コミュニケーションの場面では,話し方の特徴,音声そのものが,話者の人柄や性格を推測するための手がかりとなる。 本年度は,昨年度までに引き続いて,音声の韻律特徴量と話者の性格印象に関する研究を重点的に進めた。またそれと並行して,自分自身の性格特性印象と英語学習スタイル,さらに英語の読解・聴解試験成績との関係について実験調査を行った。 まず,音声の韻律特徴量と性格印象の関係性については,音声の時間構造や基本周波数(F_0),すなわち,発話速度や抑揚を操作した実験を行ってきた。実験では,日本で開発された高品質な音声分析合成方式であるSTRAIGHTを用いた。そして,性格特性5因子モデルに基づくBig Five Scaleを使用して,音声から想起される話者の性格印象を測定した。 その結果,韻律特徴量を連続的に変化させると,性格特性ごとにピーク位置や傾斜は異なるが,特徴量の大きさと性格印象の特性値の間に,U字・逆U字型の曲線関係が見出された。そこで,特性ごとに固有の5つの曲線パターンを統合する形で,人物像の全体を再構成するモデルを提案した。これらの知見について,今年の国際音響学会議で発表した。 次に,自分の性格印象と英語学習スタイル,英語の読解・聴解試験成績との関係については,大学入試センター試験の筆記試験とリスニングテストを用いたモニター試験を行い,それらの関係を分析した。その結果,性格の自己イメージや学習スタイルと,総合学力や学力パターンとの関係が検出された。これらの結果を,研究論文にまとめて「日本テスト学会誌」に投稿し,採択されたところである。
|