2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17530508
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
森岡 正芳 奈良女子大学, 文学部, 教授 (60166387)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 智子 日本福祉大学, 社会福祉学部, 助教授 (00335019)
本山 方子 奈良女子大学, 文学部, 助教授 (30335468)
水間 玲子 (中間 玲子) 福島大学, 人間発達文化学類, 助教授 (80343268)
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Keywords | ナラティヴ / 対話 / 心理療法 / フィールド研究 |
Research Abstract |
平成18年度の本研究は以下のような経過で行った。 1ナラティヴの働きの微視的分析 17年度の研究で、心理臨床、保健医療、教室場面でのナラティヴ概念を整理し、その根本的な両義性をとらえることができた。18年度はそれを受けて、大きく二つのナラティヴのはたらきについてセラピーの会話場面を抽出し、検討を行った。ナラティヴの働きには、微視的な分析を通じて把握される小さなストーリーのレベルと、面接の回を重ねる問に浮かび上がってくるライフストーリーという大きな筋立ての働きの二つのレベルがあることが想定される。研究グループはセラピーを対話場面としてとらえ、その分析を通じて、新たなストーリーが生まれてくる瞬間を把握した。このストーリーは自己の再構成に重要な働きをなすことを明らかにした。この研究は日本心理臨床学会第25回大会盲主シンポジウム(2006年9月16日関西大学)および、日本教育心理学会第48回総会ラウンドテーブル(2006年9月17日岡山大学)にて発表した。研究代表者は臨床心理学誌にてその成果の一部を公刊した(「物語の構成力」臨床心理学7-2)。 2保健医療福祉領域におけるナラティヴ概念の整理 語り手の人生がからむ大きなストーリー(ライフストーリー)の働きについて、研究グループは癌看護、高齢者看護、および障害者福祉の現場から資料を抽出し、現在分析中である。その分析経過において、ナラティヴ概念が実践現場に応じてさまざまな定義がなされていることに注目した。その検討結果は、日本保健医療行動科学会第21回大会にてワークショップを企画し発表した(2006年6月14日大阪産業大学)。 3現場記述に関わる方法論の検討 臨床実践場面をどのように記述し、テクスト化するかということを試行的にくり返し、集団で検討する。この試行にもとついて、ナラティヴの小さなストーリーのレベルがどのように生じるか、その生成プロセスをとらえた。この作業を通じ、現場から理論を構成していく方法論の検討が必要となった。社会構成主義や対話的自己論の視点を導入し、現場の生きた記述の方法を討議した。研究グループはこれについて、The Fourth International Conference on the Dialogical Self(Braga, Portgal 2006.6.2)にてシンポジウムを企画し、発表をおこなった。またこのテーマについて研究代表者は臨床心理学誌に、論文を執筆した(「現場から理論をどう立ち上げるか」臨床心理学,7-1)。
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