2007 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者のための心理療法の開発とその実際的展開-包括的セラピーを中心に-
Project/Area Number |
17530513
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Research Institution | Tokyo University of Social Welfare |
Principal Investigator |
原 千恵子 Tokyo University of Social Welfare, 社会福祉学部, 教授 (30320823)
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Keywords | 高齢者 / 施設入居 / コラージュ療法 / 箱庭療法 / 音楽療法 |
Research Abstract |
施設入居者中の高齢者を中心にセラピーを実施している。セラピー実施回数は現在130回(8年目)である。これまでの経験を通して、高齢者に対するるセラピーは言葉によるよりも、芸術療法的手段の方が効果があることがわかってきた。しかし、既存の方法をそのまま実施するのは無理なので対象者に合わせ、種々の工夫をした。たとえばコラージュは対人関係を主として、会話を多く交えながらセラピストと制作した。「ナラティブメソッドによるコラージュ」とも言うべきもので、話の不十分なところをコラージュで補うといったものであった。その結果、これまでほとんどしゃべらなかった人が、自分の思いを述べ、作品は明るく楽しいものになってきた。 箱庭療法では、既存の砂箱は、視野がせまくなり、体の自由もきかなくなってきた対象者には大きすぎるので、視野に入り、かつ手の届く大きさを基準とし、対象者にあわせたものに代えて使った。そして車椅子の対象者や移動が困難な対象者にもできるように、ミニチュアを人、動物、植物、建物、宗教的オブジェ、乗り物などに分類してセラピストが持ちまわって選んでもらうようにした。結果的に高齢者は興味を持って箱庭制作を行い、作品は回想を主としたもの、宗教的なテーマ、団欒、憩い、希望などに分類でき、心的内面を表現することができた。 音楽療法では、これまであまり採用されていないクラシック音楽の「鑑賞」を中心に、音楽を聴きその感動を色で表現するなどを通して、高齢者の認知機能を活性化する試みや、空間認知機能の向上などを期待して実施効果を得ることができた。 高齢者には演歌や童謡がよい、という既成概念に限られがちだった音楽の幅をひろげることができ、クラシック音楽を楽しみにする人がふえてきた。
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