2006 Fiscal Year Annual Research Report
児童虐待等の被害経験が成人期女性に及ぼす影響に関する研究
Project/Area Number |
17530518
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
藤野 京子 早稲田大学, 文学学術院, 助教授 (10386568)
|
Keywords | 児童虐待 / 親からの不適切な扱い / 成人女性 / 被害 / 加害 / DV |
Research Abstract |
児童虐待被害についての調査の多くは、病院等特定機関に係属している者を対象としていることから、本調査では、そのような母集1団の偏りを排除するため、二段抽出法により東京都内在住の一般人女性5,000名を調査対象者とした。また、児童虐待被害の影響は、被害を受けている時点に限定されず、被害を受けて以降の生活に影響を及ぼすと予想されたことから、本調査では、調査対象者が受けた児童虐待被害のみならず、調査対象者の配偶者等との間の暴力の加害や被害、調査対象者ないし配偶者等が調査対象者の子どもに振るう児童虐待加害について調査することとし、加えて、調査対象者の児童のころのセルフ・エフィカシー、親の養育態度、成人以降の夫婦関係や一般の他者との関係の持ち方、育児観、人生に対する主観的幸福感等についても測定し、児童虐待被害が後続の生活に与える影響の範囲やその抑止要因、促進要因を明らかにすることを目的とした。上記調査対象者に調査票を郵送し、有効回答者1,027名を分析対象とした。 その結果、児童のころ親から暴力を振るわれた者ほど、配偶者等や子どもに暴力を振るったり、配偶者等から暴力を振るわれたりするなど両者の関連性が認められた一方で、配偶者等との被害・加害関係には暴力以外の夫婦関係が影響を及ぼしていること、子どもへの暴力に対しては、調査対象者の親の養育態度、調査対象者自身の育児観等が影響を及ぼしていることが示された。加えて、主観的幸福感についても、親からの暴力以外に、セルフ・エフィカシー、他者関係のあり方等が強い影響を及ぼしおり、すなわち、親からの暴力が同程度であったとしても、他の要因如何で、成人期以降の適応の程度が異なることが示された。 なお、質問紙調査の回答者の一部である39名に面接調査を行い、児童虐待被害を受けながらも、今日に至ることができた過程の詳細についても調査した。
|