2005 Fiscal Year Annual Research Report
世代間交流を促す「祖父母と孫の回想法」の開発:祖父母の自己語りと自我同一性の関連
Project/Area Number |
17530521
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
山口 智子 日本福祉大学, 社会福祉学部心理臨床学科, 助教授 (00335019)
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Keywords | 世代間交流 / 自我同一性 / 基本的信頼感 / 大学生 / 祖父母 / 孫 |
Research Abstract |
急速な高齢化にともない、高齢者の心理を理解し、高齢者の生活の質を高める方法を開発することは急務の課題である。一方、青年期の問題として、自我同一性をめぐる問題が指摘されている。これらの高齢者・青年期の問題について、祖父母と孫の交流が時間的展望を促すという知見もあり、祖父母と孫の世代間交流は両者の発達を促進する可能性が考えられる。そこで、本研究では祖父母と孫の関係に注目し、高齢者の心理的援助として注目されている回想法(Butler,1963)を用いて、祖父母と孫の世代間交流を促す回想法の開発を試みる。また、祖父母が孫に人生を語る世代間交流にはどのような意義があるのかを検討する。 まず、今年度は孫である大学生を対象として、祖父母と孫の世代間交流の把握する尺度を作成し、世代間交流の様相を把握し、世代間交流と自我同一性・基本的信頼感の関連を検討した。質問紙の配布は313名、回収は289名であり、278名分を分析した。その結果、5因子(安全基地、干渉・期待への負担感、成長の見守り、時間的展望促進、世代継承性の確認)からなる世代間交流尺度の有用性が確認された。大学生の祖父母との世代間交流は「成長の見守り」「時間的展望促進」「世代継承性の確認」の得点が高く、肯定的であるが間接的な交流が多い。また、自我同一性・基本的信頼感との関連では、「干渉・期待への負担感」は負の相関が認められ、「成長の見守り」では正の相関が認められた。これらのことから、否定的な交流を含めた世代間交流尺度の意義が確認された。 また、わが国における回想法の動向についてまとめ、祖父母と孫の回想法の位置づけを検討した。
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