Research Abstract |
本年度は,〔研究1〕多属性-多肢選択意思決定における,合理的選択基準に反した文脈依存性を検討する選択実験データ(2006年1-2月に実施)に関する詳細な分析を行い,さらに,〔研究2〕眼球運動測定によって,前述の文脈効果が生じるメカニズムを検討する実験を実施した(2007年1-2月に実施). 〔研究1〕多属性意思決定における代表的な文脈効果として,魅力効果,類似性効果,妥協効果の3つをあげることができる.予備調査によって設定した20カテゴリー(商品,サービス)に関する2属性-3肢選択意思決定課題について,3種類の文脈効果を選択反応率だけではなく,確信度と反応時間も測定することによって詳細に検討した.その結果,代表的な3種類の文脈効果が,選択確率と確信度において明確に見出された.ただし,魅力効果は顕著であったが,妥協効果は比較的小さい傾向が見られた. 〔研究2〕本実験では研究1に基づく12刺激の2属性を操作した.実験参加者の眼球運動を測定し,3肢選択課題において文脈効果が生じるメカニズムを明らかにすることを目的とした.魅力効果,類似性効果,妥協効果の3つを検討したが,現在は,魅力効果条件に関する大まかな分析が終了した段階である.今回の眼球運動測定実験でも,選択反応率において有意な魅力効果が示された.眼球運動データ分析の結果,魅力効果が示された試行では,ターゲットに対する総停留時間が有意に長く,ターゲット項目内部のサッケード回数が有意に多く,さらに,ターゲット-デコイ間と,ターゲット-コンペティター間では,コンペティター-デコイ間よりもサッカード回数が有意に多いことが見出された.筆者らは3種類の文脈効果を包括的に説明する確率的比較-グルーピングモデル(確率的コネクショニストモデル)を提案しており,眼球運動のさらに詳細な分析と,実験データに基づくモデルの改良が今後の課題である.
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