2005 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカおよび日本におけるシティズンシップ教育の思想史的文脈とその変容
Project/Area Number |
17530556
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
小玉 重夫 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化研究科, 助教授 (40296760)
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Keywords | シティズンシップ / 公共性 / 教育 / ハンナ・アレント / チャータースクール |
Research Abstract |
平成17年度においては、まず、1990年代のアメリカにおけるシティズンシップ教育の思想的展開を分析、検討した。具体的には、1993年から1995年にかけて当時のクリントン政権の内部で議論された「ニュー・シティズンシップ」の構想とその内部対立について、その背後にある思想史的な文脈をふまえながら、よりふみこんだ具体的な分析の作業を行った。その際特に、「ニュー・シティズンシップ」構想の前史として、1991年のミネソタ州におけるチャータースクール法の制定とその前後の学校改革論、および、ミネソタ大学ハンフリー公共政策研究所等を中心とした「ニュー・シティズンシップ」構想等について、上述の思想史的な文脈との関係を強く意識しつつ検討した。また、これらの動きがその後の展開のなかで、今日に至るまでの間にどのような変容を見せているかを含め、検証の作業を行うために、本年度9月に渡米し、ミネソタ等に滞在して、関係者への聞き取りを含めた、現地での資料収集とヒアリングを行った。具体的には、ミネソタ大学のハリー・ボイト教授、ミネソタ州セントポール市のアヴェロンチャータースクールのアンドレア・マーティン教諭と面会し、聞き取りを行うと共に、意見交換を行った。その過程で、2002年のNCLB法(一人の子どもも落き去りにしない法)が、学校改革におけるシティズンシップ教育の位置づけにおいて、「包含」と「排除」の問題をめぐって重要な論争点を顕在化させていることが浮かび上がってきた。この点をふまえ、NCLB法の実施過程について、および、シティズンシップ教育における「包含」と「排除」をめぐる間題について、論文にまとめ、発表した。 これらの作業と並行して、日本におけるシティズンシップ教育の歴史と実践についても研究を進めた。本年度は、戦後の生活綴方教育における無着成恭らの実践とその背後にある政治的自立と経済的自立をめぐる問題に焦点をあて、その研究成果を論稿として発表した。 以上の成果をふまえ、アメリカと日本のそれぞれのシティズンシップ教育をめぐる思想文脈について研究を進め、両者の関連について検討を深めていくことを、次年度以降の課題としていきたい。
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Research Products
(3 results)