2006 Fiscal Year Annual Research Report
「いのちの尊厳」教育における生命科学的思想の位置価値と育成課題に関する実証的研究
Project/Area Number |
17530591
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
増渕 幸男 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (40149076)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊倉 鴻之助 上智大学, 理工学部, 教授 (70129790)
羽入 佐和子 お茶の水女子大学, 文教育学部, 教授 (00126351)
佐竹 正延 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (50178688)
和田 サヨ子 聖母大学, 看護学部, 教授 (70310084)
加藤 守通 東北大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (40214407)
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Keywords | いのちの尊厳 / 生命科学 / ゲノムサイエンス / 臓器移植 / 遺伝子 / 死生観 |
Research Abstract |
「いのちの尊厳」が日常的に軽視されてきている教育現実を省みると、子どもの成長・発達に対してその影響は深刻度を増している。それを「いのちの尊厳」教育として焦点化しながら、教育現場でどのように教えられているのかを現在使用されている小学校・中学校・高等学校の教科書(道徳、理科、公民・倫理、生物、化学)を分析し、その結果に基づいてお茶の水女子大学付属中学校で授業実践を行い、生徒の「いのちの尊厳」に関する理解度、および死生観について対話を通じた実態把握をすることができた。その際、「いのちの尊厳」に関係した教科書の記述内容について、生徒たちが概ね理解しているとの結果を得ることができた。むしろ教師にとっては理解困難な内容(専門用語や因果関係の説明)が問題点として指摘でき、初等・中また、専門知識の供与を得て、ゲノムサイエンスの抱える教育的問題に迫る必要性を確認した。また、研究分担者の所属する大学で、400名の学生にテーマに関するアンケート調査を行い、高等学校までの教育がゲノムサイエンスをはじめ、人間の死生観に関する正しい教育が欠如していることも分析できた。これらの結果について、研究成果報告書で緻密なデータ分析を行い、今後の研究につなげる示唆を見いだしたことにより、今後は国際的視野に立って比較研究が不可欠であるとの認識を共有することになった。 一方、課題に関する成果の公表については、研究代表者が2度にわたり研究報告を行うことにより、公にすることができただけでなく、研究分担者も各人の立場で論文による発表をしてきた。 理論的研究としては、西洋文化の中で取り扱われてきた「いのちの価値」は、日本語の概念分析と比較することによっていっそう鮮明になり、この概念が必ずしも一義的には規定できない深く複雑な人間の尊厳問題を含んでいることも確認できた。以上のことを踏まえて、今後の研究課題としては、生命科学の人間観を積極的に教育学の学問分野に取り込んでくることの必要性を確認し、教育学の新たな研究領域として生命教育学の構築を目指す試みがなされるように取り組むこととなった。このことは教育学の伝統的研究領域に新たな領域を開拓することになると思われる。
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Research Products
(7 results)