2006 Fiscal Year Annual Research Report
WTO加盟後の中国高等教育の対外開放性に関する実証的研究
Project/Area Number |
17530613
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大塚 豊 広島大学, 大学院教育学研究科, 教授 (00116550)
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Keywords | WTO / 中国 / 高等教育 / 対外開放度 / トゥイニング・プログラム / 遠隔教育 / 孔子学院 / 改革・開放政策 |
Research Abstract |
2001年にWTO加盟を果たした中国では、その後「サービス貿易一般協定」(GATS)に基づき、高等教育分野では、(1)遠隔教育や通信教育、(2)留学生教育、(3)他の加盟国内での学校・教育活動の運営、(4)外国籍教員の移動による教育、の4つの教育サービスの提供方式をとっている。本年度は、このうち「内外協力による学校運営」(原語は「中外合作べん学」)と呼ばれる第三の方式に関わる活動について、現地調査も踏まえて、実態の解明に努め、その成果の一端を平成18年6月開催の日本比較教育学会第42回大会で報告した。2002年末時点の統計では、全国の内外協力による学校運営を行う機関は712を数え、95年の10倍以上に増えた。実施機関の所在省も上海、北京、山東など東部沿海の各地を中心に28省・市・自治区に及んでいる。上海のみの統計では、2005年11月1日時点で189のプログラムが同市教育委員会によって認可されている。内外協力による学校運営が急速な進展を見せたのは、内外双方の大学にとって動因があったからである。中国の大学について言えば、それが中国高等教育に不足している資金をはじめとする各種のリソースを補い、高等教育の改革と発展を促し、国際競争力を高めるのに役立つと捉えられたからである。一方、外国の大学について言えば、当該政府の国際化政策の下で、国際交流や国際理解を増進する必要があり、大学の知名度を上げ、経済的利益のために中国人マンパワーを獲得し、教育市場を拡大するなどの目的があった。次に、中国政府により次々と公布された関連法規を子細に検討した結果、中国政府の内外協力による学校運営に対する姿勢の変遷を垣間見ることができた。すなわち、当初「中国の教育事業を補充するもの」(95年「暫定規定」)という捉え方であったが、「中国教育事業の構成部分」(2003年「条例」)と位置づけられるようになる。さらに、2004年の「内外協力による学校運営条例実施規則」では初めて内外協力による学校運営者が「合理的見返り」を受け取りうることが明記された。平成18年度後半からは、こうした外国機関の中国進出の対極にある中国側機関の海外進出に焦点をしぼり、北京語言大学バンコク校、バンコクおよびソウルの孔子学院などの現地調査を実施した。同調査の結果は平成19年度に学会発表する予定で準備中である。
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